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症状でなく、人生を診る 医王ケ丘病院 岡宏さん

医人伝

(2017年12月12日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

医王ケ丘病院(金沢市) 理事長 岡宏さん(49)

画像「患者が緊張してしまうので白衣は着ない」と話す岡宏さん

 医王ケ丘病院(金沢市)の精神科入院病棟には、鍵がかかる病室がない。入院患者が無断で外に出られないように、一部の病棟を施錠する精神科病院が少なくないが、「のびのびした環境で治療を受けてもらいたい」と、2003年に「全開放型」にあらためた。

 「閉鎖された環境は、患者の心の傷につながりかねない。外来の患者や職員が緊張感を持つことにもつながる」。施錠をやめることを不安がる職員もいたが、やってみれば、病棟の雰囲気は穏やかになり、精神科の門をくぐることの「ためらい」を減らすという効果もあった。

 「精神科に通う患者の3割は、初めに別の科を受けてから来るとされる」。その間に精神疾患の症状が進行し、回復に時間がかかってしまうケースが少なくないという。

 5年前には新たに「ストレス外来」と「こども思春期外来」を開設した。「意欲が湧かず、会社に行きたくない」「子どもの腹痛や頭痛が続く」といった不調を感じているのに、頼るべき診療科が分からずに放置している患者に来院を呼び掛ける。

 医王ケ丘病院は祖父が創立し、父が継いでいた。自身も医師を志し、岡山県の川崎医科大を卒業後、「内科なら仕事に困らない」と考え、石川県の能登地方の病院で消化器内科医として働き始めた。結果として、それが精神科医への道につながる。

 当時、いくら薬を処方しても治らない患者が何人もいた。「自分の腕が悪いのか」と思い、友人の精神科医に相談すると、「精神疾患が原因では」と指摘された。アドバイスに従い、患者の話に耳を傾けると、うつ病や不安障害から症状が起きていることに気づかされた。

 「患者が置かれている環境を改善させる必要がある」。症状に向き合うだけではなく、患者に寄り添うことが大切だと感じた。

 医師5年目の1998年、転向することを決意し、金沢大で精神科の研修を受け、県内の病院で経験を積んだ後、2003年に医王ケ丘病院に移った。

 精神科医になってからは、とにかく患者の話にじっくり耳を傾けるようになった。時には、相づちを打つだけで1時間以上も聴きっぱなしのことも。「症状ではなく、その人の人生を診ている。患者さんとは一生のおつきあいをして、社会復帰をサポートしたい」(堀井聡子)

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