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がん患者 治療後の妊娠に光 三重大病院で卵巣凍結

(2017年12月14日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する
画像凍結させた卵巣を保管するタンク=三重大病院で

 三重大病院(津市)は、日本産科婦人科学会から、がん患者に対する卵巣凍結の認可を県内で初めて受けた。抗がん剤や放射線の治療は生殖器に与える影響が大きく、精子や卵子が減ることで治療後に妊娠できなくなる場合があるため、妊娠を希望する人からは凍結を求める声が強まっていた。(鈴木里奈)

 県内ではこれまで精子と胚(受精卵)、未受精卵子の凍結は行われていたが、卵巣凍結はなかった。卵巣凍結は、片方の卵巣を切除し、中央にあるリンパ管や血管を取り除いた後、卵子が含まれる表層だけを残して液体窒素で急速に凍らせる。卵子凍結と同様に、体外受精の技術でできるため難易度は高くないが、三重大病院で実施する必要性の高さや、凍結処理をする施設などが整ったと評価され、今年8月に認可を受けた。

 凍結などの療法は先進医療で保険適用外のため、実績は少ない。日本では卵巣凍結は2006年から始まり、16年までに201例が実施された。これまで三重大病院は凍結を望む患者には、岐阜大病院や滋賀医科大病院などを紹介していたが、がんは早急な治療が必要なため、県内での実施を求める声が寄せられていた。

 また、がん治療で妊娠機能を失う可能性があることを知らずに手術に臨む患者も多いため、いざ妊娠しようと思ったときに後悔する場合があり、事前に医師から説明があるかが重要となる。

 今年発表された日本癌治療学会の「小児、思春期・若年がん患者の妊孕(にんよう)性(妊娠する力)温存に関する診療ガイドライン」では、医師は原則40歳前でがん治療を始めた患者に対し、手術の前に治療による不妊の可能性の有無や、妊孕性温存のため卵巣などを凍結する選択肢があると伝えるよう記載している。

画像前沢忠志助教

 同大産科婦人科高度生殖医療センターの前沢忠志助教(37)は「凍結をしたくても、他県に行ってまではと諦める人もいるので、県内でできることに意味がある」と強調する。

 一方で医療関係者の間でも凍結の治療法についての認知度が低いことを指摘し、「患者が術後になって知るのでは取り返しがつかない。手術前に情報を提供することの大切さを、講演会などでも伝えていく」と語った。

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