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臓器提供 納得いく「みとり」に 家族への配慮・支援模索 机上訓練重ねる医療者ら

(2017年12月19日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像名古屋第二赤十字病院が実施した子どもの臓器提供の机上訓練=名古屋市昭和区で

 病気や事故で脳死状態になった患者の家族に医師が臓器提供という選択肢を提示することは、患者の死が、近い将来確実に訪れることを意味する。臓器提供をするのか、そのままみとるのか−。肉親の死を突きつけられた上、限られた時間での決断を求められる家族には、医療者側の配慮と支援が欠かせない。医療機関の訓練からドナー(提供者)の家族の支援のあり方を取材した。(稲田雅文)

 名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)は先日、子どもの臓器提供に備えた机上訓練を実施した。18歳未満の子どもの場合、医療機関は虐待がなかったかどうかを確認することが求められている。手続きの中で、成人と違う部分を確認するのが目的だ。

 頭を強打し運ばれた5歳の男児が、治療を尽くしたものの脳死状態に陥ったと想定。訓練では、両親への説明の場面に先立ち、主治医役が「厳しい状態であることをお話しし、終末期の選択肢として臓器提供についても伝えようと思います。どうでしょうか?」と問いかけると、看護師役は「母親は脳死ということをとても受け入れられないと思います。納得のいく救命治療がされたと思うことや、受け入れまでの時間も必要だと思います」と答えた。訓練のシナリオでは、両親が説明に耐えられる心理状態なのか、面談を重ねて慎重に見極めながら進めていく様子を詳しく描いた。

 2010年の改正臓器移植法の施行で、患者本人が書面による意思表示をしていなくても、家族の同意があれば臓器提供ができるようになった。改正から17年12月10日まで臓器提供が実現した408例のうち、書面による本人の意思表示がなく、家族の承諾で実現したのは312例に上る。

 臓器提供について生前に話し合ったことがない場合「優しい人だったから、提供したいと思うはず」などと、本人の気持ちを家族が推測して決めることになる。家族が承諾すれば患者の脳死判定が行われ、法律上、2回目の判定が終わった時点で死亡宣告がされる。その後は定められたスケジュールに従って臓器提供が進められる。家族が死亡時刻を決めることにもなり、心理的負担は重い。

 家族の自発的な申し出が前提で、最初の説明の時点から臓器提供の直前まで、いつでもやめられる。通常、脳死状態になると数日から10日ほどで心臓が停止するため、限られた時間の中ではあるものの、家族の決断をせかすようなことがないよう配慮が必要だ。

 ところが、臓器提供の際、家族への説明や院内の調整役を務める院内コーディネーターで看護係長の曽我部由希子さんは「臓器提供をした家族に後日会った際、『臓器提供は後悔していないけれど、承諾後に大勢の人が周りで動きだし、断れる雰囲気ではなかった』と言われたことがあります」と難しさを語る。

 同病院は、08年4月に初の脳死での臓器提供を実施し、約10年で7件の脳死下と5件の心停止後の臓器提供をしている。臓器提供を承諾する家族の特有の心理状態に対する支援の必要性を医師や看護師らが感じ、15年に「移植医療支援室」を設置した。

 シナリオでは、過去の反省点も生かし、主治医が病状と選択肢を提示した後、看護師がショックを受けた両親のフォローのために面談する場面も設定。限られた時間の中で、ドナー家族に看護師らが寄り添い、納得のいく終末期の決断をしてもらうための支援をちりばめた。

 ドナーの主治医を務めた経験がある救急科医長の神原淳一さんは「どういう終末期を選べば納得いくみとりになるのか、ドナー家族以外には分からない。亡くなるまで積極的な治療を続けるのか、臓器提供をするのか。家族の状態を見極めながら、医師として中立の立場で選択肢を示している」と指摘。曽我部さんは「患者や家族の意思を尊重できるよう医療者が寄り添うことが大切」と語る。

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