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難病「骨化症」研究に力 整形外科准教授 辻崇さん

医人伝

(2017年12月19日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

藤田保健衛生大(愛知県豊明市) 整形外科准教授 辻崇さん(47)

画像「後縦靱帯骨化症」などの治療と研究を続ける辻崇さん

 頸椎(けいつい)の手術を終え、装具で首を固定した70代の女性が来院した。経過が良好で装具を外しても問題ないのだが、「まだ怖くて」と女性。「外さないと首を支える筋力が落ちて、痛みが出ることもある。もう大丈夫ですよ」。丁寧に説明すると、女性はようやく笑顔を見せた。

 専門は脊椎(背骨)と脊髄。中でも手足のしびれや痛み、歩行障害などが現れる原因不明の難病「後縦靱帯(じんたい)骨化症」や「黄色靱帯骨化症」の治療と研究に力を注ぐ。9年前に厚生労働省の研究班に加わり、これを機に患者会の世話人も務めている。

 骨と骨をつなぐ靱帯はコラーゲンが主成分で元は柔らかい。脊髄の通り道「脊柱管」の前に後縦靱帯、後ろに黄色靱帯がある。カルシウムが沈着して骨になり、脊髄を圧迫するのが靱帯骨化症。根本的に治す薬はまだない。症状が進んで生活に支障を来す場合は手術をすることもある。ただ、神経の束である脊髄を傷つけるリスクを伴う。

 慎重に治療を進めても、術後に痛みやしびれが残ることは少なくない。患者会を通して気付かされたのは、そんな患者たちの苦痛。治療で症状が改善すれば「治った」と捉えるのが医者の感覚だが「患者は苦しみ続けている」。全国で行う講演や催しで「何とかならないんですか」と訴えられることは多い。

 苦痛を残すことはできるだけ避けたい。そんな思いから、難易度が高い手術法をあえて選択することもある。

 医師の道を歩んだのはサッカーがきっかけ。愛知県豊田市で過ごした小学生時代にサッカーを始め、県代表として全国大会にも出場した。プロを夢見たこともあったが、壁は高く断念。「それなら選手を治せる医師に」。整形外科で国内屈指の実績を持つ慶応大医学部に進んだ。

 サッカーで故障しやすいひざを治したかったが、分野を選ぶ自由はなく、与えられた研究テーマの脊椎が専門に。扱う病気はどれも手術が難しく、必死で腕を磨いた。一人前になったと思えたころ慶応大に戻り、出会ったのが靱帯骨化症の研究と患者たちだった。

 「目の前の患者さんの治療を大切にしながら、難病の研究にも携わっていきたい」。愛知県で育った縁で昨秋に藤田保健衛生大へ。続けていたサッカーは引退し、今の趣味は「週末の子育て」と話す。(小中寿美)

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