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〈生活部記者の両親ダブル介護〉(32) 懐かしの曲を母に

(2017年12月20日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

眠り誘うひとときの休息

画像懐かしの歌を聴きながら、寝てしまった母。母は高橋真梨子さんの「桃色吐息」も大好きです

 さすがに疲れる。在宅介護で苦労している方に比べれば、まだまだ甘いが、父(80)が肺炎、あごの手術をするため入院してからは、心理的にも肉体的にも母(81)とのダブル介護は、にわかに急な上り坂になってきた。

 私のパーキンソン病の症状も進んだ。速くは歩けない。父の入院グッズを運んでも、小刻みにしか歩けないことにいら立つ。エレベーターまでが遠い。

 父は特養に落ち着いていたが、病院に入院すると特養の父のスペースは基本、3カ月でなくなる。空きを待つ人が多いからだ。特養で食事ができるまでに父は回復できるのか。期限まで1カ月を切った。過ぎてしまったら、父の居場所はどうなる? 母も一時経験した「老人漂流」を繰り返すのか。今回も「深刻にならない介護」のコラムにしたいのに、現実は冷徹であり、心は正直だ。悲観論ばかりがにじみ出る。

 母のこともある。2人を回るため、週末は朝5時に起きるようになった。まずは母の所へ。認知症ながら、記憶に働き掛ける効果を期待して、昔のヒット曲を聴かせている。「上を向いて歩こう」など坂本九さんの歌がなじみのようだ。私は脇に椅子を寄せ、母の手に手を重ねてリズムを取る。曲を聴く間は話し掛けずに済むので、私にも多少の休息だ。穏やかな歌、母の手の感触…。何だか眠くなる。

 気が付くと数曲目の「見上げてごらん夜の星を」がかかっている。横を見れば、母も寝息を立てていた。母の手を布団の中に戻し、耳元に口を寄せて告げた。「お母さん、これからお父さんの所に行ってきますからね」。母は寝息を立てていた。(三浦耕喜)

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