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延命選ばず最後の感謝

(2017年12月20日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

コマツ元社長 安崎さんが生前葬 ツイッターに多くの共感

画像「感謝の会」後の記者会見を終え、車いすで会場を出る安崎暁さん=11日、東京都港区で

 建設機械製造大手コマツ元社長の安崎暁(あんざきさとる)さん(80)が、「感謝の会」として東京都内で開いた生前葬。終活の一つとして、注目を集めつつある。(白鳥龍也)

 「昔からの知り合いや友達に何年ぶりかに会う機会を提供できた。会う人会う人に思い出があり、『やあやあ』と言えただけで楽しかった」。会は11日に2時間にわたって開かれ、約1000人が参加。車いすで出席した安崎さんは、その後の記者会見で満足そうに振り返った。

 11月下旬に個人で出した新聞広告で安崎さんは、10月上旬に胆のうがんが見つかり、転移が多く手術ができない状態と報告。「クオリティー・オブ・ライフ」(生活の質)を優先し、副作用が生じる可能性がある放射線や抗がん剤治療は受けないとして、感謝の会の開催を伝えた。

 直後からインターネットの短文投稿サイトのツイッターには、「死を前にした時に真っ先に人に感謝できる生き方がしたい」「生を楽しみ、死に向き合う潔さを見習いたい」といった共感の書き込みが相次いだ。会の参加者も口々に「厳格な経営者だった安崎さんらしい決断」と評した。一方、「(延命治療拒否は)自分にはできないと思う」という声もあった。

 安崎さんは、延命治療を望まない理由を「(最期まで意識を保って)自分の人生は良かったと思って棺おけに入りたい」と説明。自己負担1割で高額医療を受けることへの遠慮も述べた。ただ、夫人は「まだ頑張れる」と励まし、食事療法にと野菜中心の食事を作ってくれるという。安崎さんは「感謝している」と声を詰まらせ「延命治療への考えは一人一人違う。自分のやり方は全員が賛同してくれるわけではないと思うし、勧めない」と強調した。

 精神科医の香山リカさん(57)は「治療と葬儀の双方を本人の意思で選択できるようになりつつあるのはよいこと」と評価。一方で「治療を拒み亡くなった人の遺族から、『無理やり受けさせれば良かった』と相談を受けたことがある。がんの告知後、取り乱して治療法を自分で決められない人もいる。(生前葬のような)新しい動きは、選択肢が一つ増えた、ととらえればよいのではないか」と話している。 

「終活」の一つの形を示す

 本人が関与できない葬儀に対し、存命中に本人の意思で行うのが生前葬だ。

 大手葬儀社の公益社(大阪市)によると、生前葬の相談は増加傾向。葬儀場を使い、仏事も営む本格的な式はまだ少ないが、レストランやホテルで「お別れの会」などとして、同窓会のように開くものは増えているという。

 同社経営企画部の広江輝夫課長(64)は「家族葬が増え、葬儀に友人や仕事関係者が出席する機会が減っている。そうした社会的な人間関係にけじめをつける場として認められつつある」と指摘。抵抗を感じる招待者もいるため、主催者は「会を機に交友関係に区切りを付け、病気に立ち向かう決意を示す」など目的をはっきりさせ、会費、服装の考えも伝えると参加しやすいとアドバイスする。

 終活カウンセラーの石崎公子さん(58)は「先祖を感じる機会が減り家族の形も変化する今、さまざまな人との関わりはこれまで以上に重視される。周囲に感謝や『人生の完成期に向け今後もよろしく』と伝えられる生前葬は、生きてきた証しにもなる終活の一つの形だと思う」と話す。

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