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医療のアイデア続々形に 県ファルマバレーセンター1年

(2017年12月21日) 【中日新聞】【朝刊】【静岡】 この記事を印刷する

 医療健康産業の集積を図る県のファルマバレープロジェクトの一環で、長泉町に昨年9月、「県医療健康産業研究開発センター(ファルマバレーセンター、PVC)」が全面開所して1年余り。プラスチック加工技術を活用した固定具や、インクジェット技術を生かして薬を患部に届ける技術の開発など、医療関連製品が徐々に形になり始めている。 (佐久間博康)

 PVCは県産業振興財団の一部門が運営を担い、「テルモ」をはじめメーカー10社、知的財産と薬事のコンサルタントの計12社が入居する。隣接する県立静岡がんセンターや地元企業、研究機関と連携して、研究開発や販路開拓の支援に取り組んでいる。

画像ドレーンカテーテルの固定具を見せる奥田隼平さん

 入居企業の「ハヤブサ」と県立静岡がんセンターが協力し、手術後に腹腔(ふくくう)内にたまった体液などを体外に排出する管「ドレーンカテーテル」の固定具「ドレーンサポート」を開発し、実用化した。

 固定具は半透明のポリエチレン製で、羽根の付いたカップの形で、側面に切り込みを入れた。羽根の部分を腹部にテープで貼り付け、穴の空いた先端部分から腹腔内まで管を挿入し固定する。羽根が腹部になじんで外れにくく、切り込みの部分から管の挿入状態を確認しやすいと好評だ。

 これまで製品化された固定具はなく、看護師らが紙コップを切ったもので代用していた。県立静岡がんセンターから開発提案を受けたPVCがハヤブサに打診した。

 ハヤブサは自動車・家電部品のプラスチック加工が主で、医療用品の製造は初めてだった。奥田隼平研究開発室長は「PVCから製造に必要な手続きや販路開拓の助言をもらえたので製品化にこぎ着けられた。医療分野進出の足掛かりにしたい」と意気込む。

 入居企業の「リコー」は県立大と共同で、自社のインクジェット技術を活用し、薬を患部に届ける技術を開発している。この技術によって薬を微細で均一な粒子にして患者に吸い込ませ、肺などの呼吸器に効果的に作用させられるという。

 リコー研究開発本部APT研究所の小番(こつがい)昭宏グループリーダーは「動物実験など県立大の知見のおかげで製剤技術の開発に手応えを得られた。製薬会社の問い合わせもあり実用化に動いている」と話す。

 ほかの入居企業では、「サンスター」が口腔(こうくう)ケア製品、「テクノサイエンス」が人工呼吸器関連器具の研究開発に打ち込んでいる。

画像ラディ丸の説明をする井木英之社長=いずれも長泉町で

 入居企業以外でもPVCが開発を支援した事例がある。「丸井商事」(静岡市)の心臓カテーテル手術用手台「ラディ丸」だ。患者の肩から肘、手首、手の指までを、3つのクッションとバンドで固定。適した角度で腕が固定され、手首の橈骨(とうこつ)動脈にカテーテルを挿入しやすくなる。

 考案したのは新久喜総合病院(埼玉県久喜市)の沢海綾子看護師。沢海さんの要望を受けて、PVCが丸井商事に開発への協力を呼び掛けた。医療機器の製造販売は初めてという井木英之社長は「ラディ丸を通じて病院関係のルートを開拓できた。自社製品の枕やクッションとの相乗効果も見込める」と期待する。

 PVCの植松浩ラボマネジャーは「中小企業の支援はもちろん、高度で先進的な研究の支援にも力を入れたい。5年、10年かかるものもあるが少しでも早く成果を世に出したい」と話している。

 ファルマバレープロジェクト 英語で薬学を意味する「pharma(ファルマ)」と米国のエレクトロニクス産業の集積地「シリコンバレー」を組み合わせた造語。世界一の健康長寿県を目指す県が2001年、富士山麓に健康産業を集積させる「ファルマバレー構想」を策定。県立静岡がんセンターと研究開発拠点の「ファルマバレーセンター」を中心に医療や医薬品、医療機器の研究開発を推進している。県の15年の医薬品・医療機器の生産額は8250億円で都道府県別では6年連続首位。県は20年の目標を2兆円と設定している。

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