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36協定結ばず医師呼び出し 藤田保健大病院 違法残業 是正勧告 割増賃金も未払い

(2017年12月27日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受けた藤田保健衛生大病院=25日、愛知県豊明市で

 藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)が、医師との間に時間外労働(残業)に関する労使協定(36協定)を結ばず緊急呼び出しを繰り返し、割増賃金も支払っていなかったとして、名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受けたことが関係者への取材で分かった。勧告は11月22日付。

 同病院は病床数が1400以上で、高度医療を提供する特定機能病院。各地の病院で36協定の上限を超えた違法残業が明るみに出て医師の長時間労働が問題となる中、重症患者の救急受け入れなどを担う大規模病院で、協定なしの違法残業が放置されていた実態が明らかになった。

 厚生労働省幹部は「この規模で協定が結ばれていないのは通常あり得ない。組織の在り方として問題だ」と批判。病院を運営する学校法人藤田学園は「医師は労働時間の正確な把握が難しく36協定の対象に含めていなかったが、緊急呼び出しは時間外労働に当たると認識を改め、対象に加えて再締結し、労基署に提出した」としている。

 関係者によると、労基署は同病院の少なくとも5人の医師が、休日や就業時間後に緊急呼び出しを受け、入院患者に対応していたことを確認。ある医師では週の所定労働時間が約39時間だったが、呼び出しによる業務は最長約9時間に及んでいた。同病院が締結している36協定の対象に医師が含まれていないことから、違法な時間外労働に当たると認定した。

 また、病院の就業規則に緊急呼び出しに対する割増賃金の規定がない上、医師らに支払われている緊急呼び出し手当などは、算定方法が時間単位になっておらず、実質的な割増賃金にも当たらないと判断した。

 通常の勤務時間以降の居残り時間が、労働に当たるのか私的な研究に当たるのかの区別が付かなくなっているとして、労働時間の適正な把握に努めることも指導した。

 労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間までと規定。企業が時間外労働をさせるには、36協定を結んだ上で割増賃金を支払う必要がある。違法な時間外労働をさせた場合でも割増賃金は払わなければならない。

医師の猶予見直しを

 労働問題に詳しい森岡孝二関西大名誉教授(企業社会論)の話 労働基準法を順守するという意識が欠如しており、極めてずさんと言える。政府の「働き方改革」に伴う残業規制は、医師への適用を5年間猶予する方針だが、速やかに見直しを検討した方がよい。過労状態で勤務すれば、医療過誤の原因にもつながりかねない。医師の健康と医療安全を守るためにも、労働時間の適切な把握に努めるべきだ。

 医師の長時間労働 医師には正当な理由なく診療を拒めない「応召義務」があり、救急患者への対応や手術などで勤務時間が長くなりやすい。政府は「働き方改革」で、残業の上限を「原則月45時間、年360時間」とし、繁忙期は最長で月100時間未満、年720時間までと設定しているが、医師への適用は5年間猶予する。厚生労働省が昨年12月、医療機関に勤務する医師を対象に実施した調査では、常勤医師の男性の27.7%、女性の17.3%で労働時間が週60時間を超えていた。

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