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長い苦しみ「なぜ減額」 肝炎給付金 発症起点見直し判決

(2017年12月31日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
資料を示しながら自身の症状について語る金沢市の男性=金沢市内で資料を示しながら自身の症状について語る金沢市の男性=金沢市内で

 集団予防接種が原因でB型肝炎に感染した患者に国が払う給付金は発症から提訴までが20年を過ぎると大きく減額される。この制度が不当として、提訴から20年以上前に発症した患者が「再発時」を対象とするよう求めた訴訟で、福岡地裁が今月、患者の訴えを認めた。長い苦しみと闘う各地の患者にも希望が芽生えている。(小坂亮太)

 「全面勝訴でした」。富山市の60代男性が担当弁護士からもらったメールには、そう書かれていた。自分にも光が差す可能性が生まれ、喜びがあふれた。

 1990年の春。体にだるさを感じ「疲れだろう」と思って受診した病院で慢性肝炎の発症がわかった。2カ月の入院。退院から4カ月後にも再び2カ月入院した。有給休暇を使い果たして欠勤扱いとなった。

 当時は銀行やコンビニの機器の整備をしていた。機械を触るのが好きだったが、体調が不安定になり、内勤に。「任される仕事が増えたころだった。後ろめたく、つらかった」人付き合いにも影響した。

 悪化を防ぐために飲酒を控えた。さらに「唾液で病気がうつると思われるのでは」と恐れ、宴席を避けるように。同僚や友人からの誘いは次第に減った。

 感染の原因は幼少時の予防接種とみられた。ただ、2012年に給付金制度ができ、提訴をした時にはすでに発症から22年が経過していた。今の制度では満額の1250万円が300万円に減る。

 現在も薬の服用や検査を続ける。悪化すれば肝臓がんの発症リスクがある。「なぜ長く苦しんでいるのに減額されるのか」。納得がいかず、まだ国の和解案には応じていない。

 福岡地裁の判決は「再発時」を、新たな発症の起点ととらえた。男性は93年には肝機能が正常になったが、95年に再び悪化。これが「再発」に当たるのではないか、と考える。

 国は福岡高裁に控訴したが「地裁でだめなら次はなかった。僕が元気なうちに決着がつき、制度を見直してほしい」と、希望を胸に行方を見守っている。

 一方、金沢市の60代男性も25年前に体のだるさを感じ、慢性肝炎と診断された。1カ月の入院で症状は落ち着いたが、3年前に再発の疑いが発覚した。

 給付金の大幅な減額にはどうしても納得がいかない。「今までとこれからの治療費を考えれば、そんな額では済まない。福岡地裁の判決は、原告の立場になってくれた」 

福岡地裁判決 「次への一歩」

 B型肝炎患者への給付金は、民法の損害賠償請求の時効に合わせ、発症から提訴までが20年を過ぎると症状にかかわらず、4分の1以下に減額される。

 給付金制度は患者側と国が合意して2012年に施行された。ただ、北陸弁護団で事務局を担う金沢弁護士会の渡辺智美弁護士は「原告側は当時から発症からの期間で差ができないよう求めていた。合意は苦渋の決断だった」と説明する。

 国との和解が成立していない原告で、発症から提訴まで20年以上が過ぎている慢性肝炎患者は、北陸3県に十数人。福岡地裁の判決に対し渡辺弁護士は「控訴はされたが次への一歩。北陸の訴訟もどう進めていくのか、判決の内容に沿って議論したい」と話す。

 国の推計では、1948~88年の集団予防接種時の注射器の使い回しが原因で感染したB型肝炎患者は45万人。給付金の総額は計3兆2千億円に上る。

 11月末現在、5万2741人が提訴し3万2271人と和解が成立。北陸3県では661人が提訴。461人と和解が成立している。

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