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かかりつけ医 大切さ訴え

(2018年1月10日) 【中日新聞】【朝刊】【福井】 この記事を印刷する

高浜町和田診療所医師 井階 友貴さん(37)=兵庫県篠山市

画像町民と共に地域医療の理想像を模索する井階さん=高浜町国民健康保険和田診療所で

 診察室には、陶製や布製などさまざまな高浜町のマスコットキャラクター「赤ふん坊や」の人形が並ぶ。イベントでこのキャラクターの着ぐるみをまとい、地域医療をアピールしている姿を見た患者や仲間たちが手作りして贈ってくれたものだ。診療所で勤務を始めて今年で10年。「地域住民の生活現場に一番近いのが診療所。これからも支えていく」と笑顔を見せる。

 大学を卒業して最初に勤務した兵庫県丹波市の病院で違和感を覚えた。「人を見ないで病気を診ている。目指すものとは違う」。丹波地域の中核病院だけに、診察室にこもったまま、開業医の紹介状を手にした患者の診察に追われた。自分に求められていた役割は、病状が快方に向かうよう処置して再び開業医に患者を委ねること。思い描く「住民の生活が垣間見える医療」とは程遠いと感じた。

 1年間勤務して2008年4月、高浜町和田診療所に移った。妻の出身地が小浜市だったことも縁になった。現在は出身地の兵庫県篠山市から1時間かけて通勤する。

 人口1万人の高浜町。40年には7700人に減少し、65歳以上が3千人を占めるとの人口動態予測が示されている。そんな中、町から「健康のまちづくりプロデューサー」を委嘱され、超高齢社会に向け「たかはまモデル」をつくる“旗振り役”を務めている。

 最初に取り組んだのは、福井大医学部と連携した研修医の受け入れ。チラシを作成し、学生の民泊先も探した。「医療者だけでまちづくりを進めても振り向いてくれない」との反省から、09年9月には地域医療の問題を住民が中心となって考える「たかはま地域医療サポーターの会」を設立。現在も住民向けに月1回、座談会を開き、雑談も交えながら「かかりつけの医師を持とう」と町民に呼び掛け続けている。

画像生き生きとした地域活力。その活用への思いを込めて地活とした

 患者一人一人とじっくりと向き合い、異常を訴えた時にはすぐに診察できるのがかかりつけ医の強み。「地域に出向き、高齢化に伴う高血圧や肺炎などの患者さんを的確に診療し、支援していく」。今の仕事ぶりは大病院と違い「地域に足が着いている感じ」と話す。

 新元号には次世代を見据え「地活」と記した。地域活力を生かした医療の実践を自らに課す。みんなが地域に出て、助け合えば人口が減少する社会の中でも生き生きと暮らせるはず。「町民をつなぐのは高浜町の町医者である僕の役割、仕事です」。次の時代も地域住民とともに歩む決意だ。

文・池上浩幸 写真・蓮覚寺宏絵

 いかい・ともき 1980(昭和55)年、兵庫県篠山市生まれ。2005年に滋賀医科大を卒業後、07年4月から柏原病院(兵庫県丹波市)に内科医として勤務し、翌08年4月に高浜町和田診療所に移った。外来のほか、町内の集会所などを定期的に回る巡回診療や、通院が困難な患者への訪問診療も手掛けている。

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