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医療ツーリズム 愛知を先進県に

(2018年1月16日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

海外富裕層向け 人材育成へ研修

画像藤田保健衛生大が整備した国際医療センターの診察室。富裕層向けに上質な内装にした=愛知県豊明市で

 愛知県で、来日した海外の富裕層向けに、日本の先進的な医療を提供する「医療ツーリズム」の受け入れ態勢の整備が進められている。人口減による医療マーケット縮小に備えるのが狙いで、県は、受け入れのためにビザや医療通訳などを手配する「国際医療コーディネーター」の育成を開始。外国人受け入れのための拠点を整備したり、海外の拠点から患者を掘り起こそうとしたりする医療機関も出てきた。(稲田雅文)

 愛知県は、有識者による「あいち医療ツーリズム推進協議会」を立ち上げたり、外国人患者の医療滞在ビザ発給の迅速化を求める国家戦略特区に提案したりするなど、医療ツーリズムの推進に積極的な姿勢を見せている。昨年12月、同県が名古屋市内で初めて開いた国際医療コーディネーターの育成研修には、県内約20の医療機関から、医師や看護師、事務職員ら約30人が参加した。

 研修を請け負ったのは、海外から患者を招く態勢をつくろうと県内の医療機関の関係者らが2016年に発足させた「中部メディカルトラベル協会」(名古屋市中村区)。外国人の旅行者向けに人工透析を手掛けている名古屋共立病院(同市中川区)などを運営する医療法人・偕行会の理事長で、同協会の川原弘久代表理事は「人口減少などで日本の医療マーケットは今後収縮していく。医療機関が生き延びるには国内の患者だけでは不十分で、国内から世界の医療マーケットへ拡大する発想が必要になる」とあいさつした。

 研修で参加者は、ビザや医療通訳の手配や、国籍・文化の違いによる注意点、未収金の発生などトラブルへの対策などを学んだ。

 県の担当者は「地域医療に影響がない範囲で、県内の進んだ医療の技術や施設を活用する。“愛知の医療を受けたい”と来日するように海外での認知度を上げ、医療の国際化を進めたい」と推進の狙いを話す。18年度以降も研修を実施していく予定だ。

 県内で最も受け入れ態勢を整えた医療機関の1つが藤田保健衛生大(愛知県豊明市)だ。新病棟が完成したのに合わせ今月から、外国人患者の受け入れ専門の施設「国際医療センター」を発足させた。

 同病院ではすでに、中国などの富裕層に積極的に働き掛けて、内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」による手術などの先進的な医療や、高解像度の画像診断を駆使した健診など、同病院でできるすべての医療行為を提供している。16年度には国内在住の人を含め4400人の外国人が受診しており、うち約160人は、同病院で治療や検査を受ける医療ツーリズムが目的で来日した。

 センターには、一般の患者用の玄関とは別の専用の出入り口を用意。エントランスはホテルのような雰囲気で、一般的なものより広めの診察室を5カ所設けた。茶色を基調とした室内には革張りのソファを置くなど、富裕層に対応した設備をそろえ、心電図や超音波の検査ができる。胃カメラと大腸カメラを備えた内視鏡室2室と、乳がん検診のためのマンモグラフィー室も設置。入院する場合は、和室や風呂、台所などを備えた特別室を選べる。中国語や英語を話せる看護師らを配属した。

 外国人は基本的に自由診療となり、同病院は日本人患者の診療報酬の3倍を請求している。「日本人の税金で支えられている医療機器などを使うため、日本人患者よりも多く負担してもらう必要がある」(担当者)からだ。

 星長清隆学長は「近い将来に、医療ツーリズムによる患者を年間500人に増やしたい。病院経営に余力が得られれば、最新の医療機器の導入などで地域に還元したい」と話す。

 偕行会は、14年にインドネシアのジャカルタに日本語に対応した診療所を開設。これまでは現地に進出した日本企業の駐在員を中心に診療をしてきた。今後は、同国の患者を日本に呼び込み、グループの病院や連携する病院で受け入れる取り組みを進めていく。

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