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iPS移植で網膜むくむ合併症 神戸の病院 臨床研究で

(2018年1月17日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
iPS細胞の臨床研究での重篤事例

 神戸市立医療センター中央市民病院と理化学研究所などのチームは16日、他人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜の細胞を、目に重い病気のある患者に移植した世界初の臨床研究で、70代の男性患者に網膜がむくむ合併症が起きたと発表した。理研によると、安全性などを確かめるiPS細胞の臨床研究で重篤事例の発生は初。

 原因の一つとみられる「網膜前膜」という部分を15日に手術で除去した。理研の高橋政代プロジェクトリーダーは記者会見で「治療で入院を伴うため重篤のカテゴリーに当たる」としたが、「緊急性や生命への影響はない。今後の臨床研究に影響はない」と説明した。

 チームによると、男性患者は、網膜に障害が起き失明することもある「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」。昨年6月に、中央市民病院でiPS細胞から作った網膜細胞を含む溶液を目に注入したが、逆流が起きて網膜前膜を形成し、網膜がむくむ「網膜浮腫」となった可能性が高いと分析。「移植手術による合併症とみられるが、iPS細胞への拒絶反応や、副作用ではなく、逆流を防ぐ手法に改善の余地がある」とした。

 ステロイドや抗VEGF(血管内皮増殖因子)を投与したが改善が期待できず、網膜前膜を除去した。術後の経過は順調という。

 再生医療安全性確保法は医療機関などに対し、再生医療が原因と疑われる一定の疾病や障害などを確認した場合、厚生労働相への報告を義務付けており、チームはこれに該当すると判断した。

 臨床研究は昨年3月に兵庫県の男性に1例目を実施。同11月に目標の計5例の移植を終えたと発表した。5例とも京都大で備蓄している、移植しても拒絶反応が少ない特殊な免疫の型のiPS細胞を用いた。今回の男性患者は2例目。

ブレーキにならない

 国立成育医療研究センター研究所の東範行・視覚科学研究室長の話 がんや、失明の恐れもある網膜剥離が起きていたら大きな問題だったが、今回の事案はそれほど深刻なものではない。網膜前膜を手術で取り除けば、問題はほとんど残らないとみられる。再生医療のブレーキにはならないだろう。手術で取り出した網膜前膜を詳しく調べれば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った細胞が原因なのかが分かる。原因をしっかり検討して、対応すべきだ。

 加齢黄斑変性 目の奥で光を受け取る網膜の中心部にあり、物を見るときに中心的な役割を果たす「黄斑部」が老化し、視力が低下したり、視野の真ん中がゆがんだりする病気。光を感じる細胞に栄養を与える色素上皮の組織が縮む「萎縮型」と、異常な血管ができて色素上皮が傷む「滲出(しんしゅつ)型」がある。日本人は滲出型が多い。

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