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発達障害 光明求めて

(2018年1月23日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像ニセ電話詐欺で逮捕された後、少年が送られた施設。両親への感謝を手紙につづった

 発達障害の息子(19)は幼少時、何度も迷子になったけれど、一度も泣かなかった。自分が迷子だと認識していなかったからだ。いつも親だけが、焦って捜しに駆け回った。母親(47)は思う。「状況は今も同じ」

 息子は昨年7月まで約1年間、少年院にいた。18歳の夏、ニセ電話詐欺で現金を受け取る「受け子」を務めたからだ。被害者は「だまされたふり」をしていて、待ち構えた警察官にあっさり現行犯逮捕された。

 もっとも「本人がどこまで罪を認識していたか分からない」と父親(50)。知人に「ちょっとしたバイト」と紹介され、素性の知れない人物に指示されるまま、自費で電車代を払って遠方に赴いた。「結局、利用されただけ」

 逮捕は2度目だった。最初は17歳で、大麻取締法違反(所持)容疑。少年審判で保護観察処分となった。中学時代も警察沙汰にはならなかったが、万引を4回、繰り返した。

 大麻も万引も友達に誘われて始めた。両親は「自分一人では悪事を働く度胸も行動力もない」とみる。

 小学校低学年で、発達障害のうち学習障害(LD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。感情の制御や言語化が苦手で、周囲が理解しづらい言動が目立った。ごみ捨て場で野良猫を袋に入れようとしてけがをしたり、通学バスで隣の席の子がいたずらされるのを、自分のことのように怒って暴れたりした。

 万引をした書店に、親子3人で謝罪に行った時、他の客の前で罵倒された。母親は「親の情けない姿を見て、心を入れ替えてくれたら」と耐えたが、息子は帰路、店員を「あいつ、何様だよ」と非難した。両親は「物事のとらえ方、感じ方が他人とは違う」とはっきり認識した。

 一般に、発達障害が非行や犯罪に直結するとは考えられていない。逆に、危険を予測できず事件や事故に巻き込まれたり「変わり者」と、いじめの対象になったりすることもある。

 母親は、障害に起因する生きづらさやストレスが、息子の非行や犯罪の背景にあるかもしれないと考えている。子育てを振り返り「寄り添えていただろうか」と、後悔することもある。

 問題が起きるたびに父親は、勤務先に「所用」と告げて休まざるを得ない。母親は関係先への謝罪や連絡に追われる。そんな両親の苦労など、息子はまったく分かっていないようにみえる。愛する、わが子。それでも、いら立ち、悲しくもなる。

 1年前、少年院の息子から手紙が届いた。見たこともないほど整った字で「迷惑かけてごめん。見捨てないでくれてありがとう」。その時の感動と「今度こそ」という期待にすがっていたい。

 だが現実は甘くない。最近の息子は外泊を繰り返し、夜の仕事だから両親と話す時間もない。専門機関や支援団体など、思い当たる所はどこへでも足を運んだが、光明は見いだせない。それどころか、18歳を超えた息子について相談できる場所は限られつつある。

 息子は半年後に誕生日を迎え、もう「少年」ではなくなる。父親が、話す。「どうしようもなく怖いんです。『次』を考えると」

 発達障害 自閉症やアスペルガー症候群など、脳の発達が通常と生まれつき違うために現れる障害・症例の総称。興味、行動の偏りや、対人関係の困難さなどが特徴とされるが、個人差が大きい。文部科学省の2012年調査では、小中学生の約15人に1人に発達障害の可能性があると指摘されている。15年の少年院法改正で、発達障害やその疑いのある少年たちに配慮した支援教育課程が新設され、16年の全少年院入院者2563人のうち、約17%が適用を受けた。

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