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望まぬ妊娠減らす活動 いなべ総合病院 川村真奈美さん

医人伝

(2018年1月23日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

いなべ総合病院(三重県いなべ市) 産婦人科部長 川村真奈美さん(56) 

画像更年期外来で患者と談笑する川村真奈美さん。未成年から高齢者まで「身近な相談相手」を心がける

 「みんな、セックスって何のためにするんだと思う?」

 三重県の久居農林高校で昨年末に行われた性教育の特別講義。川村さんの問い掛けに、卒業を控えた3年生たちは顔を見合わせた。

 「子孫を残すため」「愛情の確認のため」と女子。照れながら男子が「気持ちいいから」。どっと笑いが起きた。

 川村さんは、それぞれの意見にうなずきつつ、具体的なリスクを解説していった。避妊の配慮がなければ1回約30%の確率で妊娠する可能性がある。望まない妊娠、出産によって人生設計が大きく変わってしまう。キャリアのないまま子どもを産めば、生活費を稼ぐのも大変になる。いずれも女性が圧倒的に不利な立場になること…。

 性の知識を隠さず正しく伝え、自分を守り、相手を思いやれる人になるための人権教育として、三重県内を中心に小中学校、高校などで2010年から活動を続けている。いつも欠かさないアドバイスは「問題があれば、先生に相談して病院にかかって」だ。

 日常の診療の中で、若い女性の知識不足に驚き、大人向けに性の健康教育の講演を始めたのがきっかけだった。その中で、「望まない妊娠」の背景には、低用量経口避妊薬への偏見のため避妊をしなかったり、恋人から性行為を強要されたりすることがあると気づき、10代への働き掛けに重心を移した。「隠さない性教育」への学校側の理解には温度差があるが、養護教諭を中心に輪が広がった。

 虐待、育児放棄の社会問題にも関心を広げ、三重県の「妊娠レスキューダイヤル」事業の立ち上げに携わった。子どもを守る特別養子縁組の制度を知ってもらうため、テレビドキュメンタリーやドラマ制作にも協力。昨年、母校でもある名古屋市立大医学部同窓会の「瑞友会賞(社会部門)」の表彰を受けた。

 三重県北部の農村部にあるいなべ総合病院に赴任して12年。別の病院に勤務する夫とともに長男を育てつつ、常勤医3人で地域の産科医療を守ってきた。緊急のお産で夜中の呼び出しも珍しくはない。週1回の更年期外来では「身近な相談相手」を心掛ける。

 「社会活動をやってこられたのも上司や同僚の協力のおかげ。望まない妊娠を減らし、虐待や貧困、暴力を少しでも減らしていきたい」と力を込めた。(編集委員・安藤明夫)

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