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親切第一 「村の主治医」 青木診療所 小川原辰雄さん

医人伝

(2018年1月30日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

青木診療所(長野県青木村) 所長 小川原辰雄さん(89)

画像「患者に親切であることから医療は始まる」と語る小川原辰雄さん

 4200人が暮らす温泉地の長野県青木村で、1961(昭和36)年から半世紀以上、村のただ一人の医師として村民の診察に当たってきた。いわば「村の主治医」だ。2月に90歳を迎える今も、多い日は40人ほどを診察し、持病のケアや治療などで忙しく過ごす。

 引退後の後継者は、信州大に勤務する若い医師夫婦に決まっているが「親切であることが医療の基本。残された時間も、できる限り村民のために尽くしたい」とまだまだ患者に向き合い続けるつもりだ。

 峠を越えた隣の坂井村(現筑北村)で、祖父は村長、父は助役という家に生まれた。医師になるのは小学生からの夢。53年に横浜医科大(現横浜市立大医学部)を卒業し、55年に長野県に戻って信州大医学部(松本市)の第一内科に勤務した。

 県内のへき地を診療で巡るうち「患者とのつながりが濃密で、治療にとどまらず、ずっと経過を見てあげられる」と農村での医療の面白さに気付いた。同県王滝村に2年間赴任した後、当時の青木村長に要請され、村営の診療所に着任した。

 自動車がそれほど一般的ではない時代、村内を歩いて往診に駆け回り、急患の家に泊まり込んで治療する日々を過ごした。それでも「災害もなく、長野県の中では比較的雪も少なくて、住みやすさにほれ込んだ」と定住を決め、9年後に自身の診療所を村に開設した。

 赴任当初に多かったのは回虫や胃がんの患者だった。半世紀の間で村民の病気も様変わりし、大腸がんや生活習慣病が増加した。「内科医として、村民に目立つ糖尿病や高血圧の管理を徹底するほか、がんの早期発見に頑張っていきたい」と力を込める。

 昆虫愛好家で、ハチ刺し症の専門家の顔も持つ。旧制中学1年生のときに読んだ「ファーブル昆虫記」をきっかけに興味を持ち、採集に繰り出す学生生活を送った。医師になって村で診療を始めると、ハチに刺される患者が年に100人を超えることに驚いた。診療の記録をまとめた論文を出し、治療法の確立に貢献したが「まだまだハチへの興味は尽きない」と話す。

 2003年には村内の保養施設だった建物に「信州昆虫資料館」を開館させ、16年には資料館を村に寄贈した。医師の傍らで集めた昆虫標本など約3万点を展示し、昆虫や自然の魅力を発信している。(今井智文)

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