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〈生活部記者の両親ダブル介護〉(35) 長引く入院

(2018年1月31日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

もとの施設には戻れない

上体を起こして、伝えたい思いを記す父。筆談で父は「水くれ」「のどがかわいた」「センベイ」とも記しておりました上体を起こして、伝えたい思いを記す父。筆談で父は「水くれ」「のどがかわいた」「センベイ」とも記しておりました

 「ため息をつくと幸せが逃げる」という。だとすれば、今、わが幸せは「だだ漏れ状態」にあるのか。誤嚥(ごえん)による肺炎で入院中の父(80)と向き合う。

 父ののみ込む力「嚥下力」のリハビリが、ここに来て思わしくない。ミキサー食もだめ。水さえむせてしまう。口は渇き切り、のどの筋肉も弱っているので、言葉も不明瞭だ。せめて口の中を湿らせようと、妻が柄の付いたスポンジに水を含ませて口の中を拭こうとする。だが、渇した父はそれをチュウチュウと吸い、結局むせてしまう。

 頼りは点滴だが、針の入る箇所も手足には尽きた。やむを得ず、首から太い血管へと管を入れ、高カロリー輸液を流し込む「中心静脈栄養」の措置に同意する。去年の今ごろの母(82)と同じ状況だ。認知症が進み「食べるということ」すら忘れたからだったが、療養型病院に移ってミキサー食なら食べられるようになった。「お父さんもそちらの病院に移りましょう。お母さんと一緒になれますよ」。夫婦仲むつまじくを祈ってきた子として言う。

 だが、父は手を横に振って子の願いを退けた。父は筆談で答えた。「○○○(元の施設名)にかえりたい」。父よ、入院が長引き、そこは退居せざるを得ないのです。施設の空きを待つ人は多い。いつまでも居場所は確保できません。それに、点滴は「医療行為」なので、介護施設では請け負えません。それがこの国の決まりです。施設を気に入ってくれていたことには、本当に救われますが、そこには戻れないのです−。

 そのことをどう説明しようか。またひとつため息をつく。(三浦耕喜)

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