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〈命を紡ぐ〉Ⅰ部 医療の現場から (1) 新生児救命 大津赤十字病院

(2018年2月2日) 【中日新聞】【朝刊】【滋賀】 この記事を印刷する

赤ちゃんが生きる道

画像ドクターカーの役割について語る中村さん=大津市の大津赤十字病院で

 薄暗い照明の下、何本もの管につながれた手のひらほどの赤ちゃんが、背中を丸めながら保育器の中で眠っている。大津市の大津赤十字病院の新生児集中治療室(NICU)。生まれつき重い病気や障害があったり、小さく生まれたりした赤ちゃんを、24時間体制で治療、看護する。

 かつては、死が避けられないと判断されると、みとりの医療が行われていたが、医療技術の飛躍的進歩で、生まれたばかりの赤ちゃんも治療ができるようになり、救命率は格段に向上した。「今は300〜400グラムで生まれても助かる人が増えてきた。ほとんどの赤ちゃんが自宅へ帰ることができる」と、同病院新生児科部長の中村健治さん(50)は話す。

 県内最大規模を誇る同病院のNICUには9床のほか、回復期治療室(GCU)21床を備える。院内のほか、県内病院から搬送された赤ちゃんを月20人ほど受け入れる。満床状態の続く施設がある中で、県内における新生児医療の最後の砦(とりで)だ。

 県内では、大きな病院より医院などで出産する人が多い。分娩(ぶんべん)異常などの仮死状態で生まれた赤ちゃんの救命で、開業医からの出動要請もあり、中村さんら医師らが、新生児専用のドクターカーに乗って患者を迎えに行く。

 マイクロバス型のドクターカーには、医療機器や保育器を搭載。重篤な症状の赤ちゃんを搬送しながら、人工呼吸や酸素投与、点滴などの治療を行う。

 出動は24時間体制で、年約130件。県内新生児の救急車出動回数の半数を占める。中村さんは、勤務日以外に、何かあった場合に対応する待機日は、呼び出しに応じて病院へ駆けつけられるよう、自宅で待機する。

 要請が重なる日は慌ただしい。生まれてすぐ、自発呼吸が難しい赤ちゃんの搬送依頼があった。現場へ急行した直後、近隣の産婦人科医院から、赤ちゃんに唇や手足が紫色になるチアノーゼの症状があると連絡が入り、2人の赤ちゃんを連れ帰ったことがあった。

 新生児医療に携わって四半世紀。どれだけ経験を重ねても「赤ちゃんが重症仮死の時は緊張する」と言い、ドクターカーの中は緊迫した空気に包まれる。搬送中に赤ちゃんが亡くなったケースは幸いないが、搬送者は年々増え続けており、このままでは現状のスタッフでは対応しきれなくなる懸念がある。

 助けた命の中には、体調が安定した後も日常的に医療的なケアを受けなければ、生きていけない赤ちゃんもおり保護者に重い負担がのしかかる。

 「在宅ケアの子は本当に大変。ケアを頑張りすぎるお母さんもいるから、サポートが必要だ」と中村さん。保護者へ思いを寄せながら、きょうも救命に奔走する。

 呼吸器やたんの吸引など医療的ケアが必要な子どもが、年々増えている。厚生労働省の調査では、19歳以下は約1万7千人に上るという。しかし、こうした子どもたちを取り巻く環境は厳しい。懸命に生きる子どもたちとその成長を支える人たちの思いに迫る。(浅井弘美)

 新生児専用ドクターカー 一般の産婦人科医院では治療が難しい新生児を、NICUのある病院へ搬送するための救急車。県内では、大津赤十字病院に1991年から、近江八幡市立総合医療センターに2013年から配備され、運行している。

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