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〈命を紡ぐ〉Ⅰ部 医療の現場から (2) 後方支援 県立小児保健医療センター

(2018年2月3日) 【中日新聞】【朝刊】【滋賀】 この記事を印刷する

子も家族も安心支え

画像入院する子どもの状況を説明する熊田さん(左)=守山市の県立小児保健医療センターで

 「夜間だけ呼吸器を付ける状態にならないと、家には帰れないだろう」

 守山市の県立小児保健医療センター会議室。入院を控える男児(1つ)の症状や今後の治療方針について、センター小児科医長の熊田知浩さん(44)は、看護師や臨床工学技士らを前に説明した。

 男児は、息を吐いた時に気管が狭くなり呼吸困難に陥る「気管軟化症」という病気などがある。県内病院の新生児集中治療室(NICU)で入院し、治療中に生死をさまよったが、一転回復。在宅生活に向けた練習を行うセンターへ転院することになった。

 県内のNICUでは5年ほど前まで、重度の障害や病気がある長期入院の赤ちゃんが増えたことで満床の日が続いた。新たな赤ちゃんの受け入れが難しくなり、大阪や京都など近隣府県へ搬送されるケースもあった。

 そのため、NICUの緊急対応の受け皿を広げようと、呼吸器など医療的なケアが必要でも容体が安定していれば、センターへ転院してもらう取り組みを、2013年から進めている。これまで先天奇形や染色体異常、出産時の低酸素状態で脳に重篤なダメージを受けるなどした、生後2カ月〜3歳の18人が転院し、多くは5カ月ほどで退院している。

 センターでは入院中、保護者が、たんの吸引や鼻のチューブから栄養剤を注入する方法、介護車両の使い方や荷物の載せ方などを実践で学ぶ。同時に、ケアをサポートする訪問看護師の手配など、在宅生活に入った後の準備も進めていく。

 退院前には保護者をはじめ病院関係者や保健師、介護ヘルパー、かかりつけ医、訪問看護師、市町の福祉担当者らによる会議を開催。子どもの病状や定期通院、リハビリの頻度、家庭環境や自宅の構造まで、情報を共有しながら在宅生活に向けた具体的なシミュレーションを描く。

 病院では手厚い看護によって支えられている子どもたち。自宅に帰れば、主に家族にその役割が移るが、日常的にケアしていくことは容易ではない。「絶対、子どもを家に連れて帰るという思いで過ごす人もいれば、子どもの病気や障害を受け入れるのに時間がかかる人もいる」と熊田さん。退院後の在宅看護に不安を感じ、重度の障害者が入所する「びわこ学園」への転院を希望し、わが子を託す保護者もいる。

 熊田さんは「この子を皆で支えていく、周りの人に頼ってもらっていいんだよ、というメッセージを保護者に伝えたい」と話し、家族をサポートする体制整備を急ぐ。

 NICUの後方支援病床 NICUなどに長期入院している子どもたちが、在宅生活にスムーズに移行できるよう支援する病床。県内では、県立小児保健医療センターに4床あるほか、大津赤十字病院に2床、彦根市立病院に2床あり、2016年度は3病院合わせて11人受け入れている。

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