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〈命を紡ぐ〉Ⅰ部 医療の現場から (3) 出生前診断 滋賀医科大病院

(2018年2月6日) 【中日新聞】【朝刊】【滋賀】 この記事を印刷する

高精度検査 増す重み

画像採血を行う小野さん。2週間後、米国から結果が届く=大津市瀬田月輪町の滋賀医科大病院で

 「何か心配なことはありますか」

 昨年10月下旬、滋賀医科大病院の母子診療科外来で、産婦人科医の小野哲男さん(43)は、県外から受診に訪れた妊娠12週になる女性(39)と夫(47)に、「新出生前診断(NIPT)」について丁寧に説明した。

 NIPTは採血のみでダウン症などの染色体異常が高精度で分かるという。晩婚化・晩産化に伴い関心が高まっており、小野さんは県内で唯一、NIPTを導入しているこの病院で、カウンセリングと検査を担う。

 滋賀医科大では、2015年11月からNIPTを始めた。以前は、県内に実施施設がなく、希望者は大阪まで行かなければならなかった。「少しでも受診者の負担を減らしたかった」。小野さんは導入経緯を語る。

 受診者は、胎児に障害が出やすいとされる35歳以上の高齢出産者が対象。16年は約30人だったが、翌17年は倍増の約70人が受診した。

 NIPTの受診者は、胎児の異常が確定すると94%が人工中絶を選択している現実がある。「命の選別」との指摘もある中、滋賀医大では「陽性」と出たケースはない。

 ただ異常が分かるのは、妊娠初期だけではない。中期以降も、超音波などで胎児に重篤な病気や障害が見つかることもある。その都度、妊婦らに状況を説明し、受診する病院など選択肢を提供するが、受け止めきれず、動揺したり、泣いたりする妊婦も見てきた。

 ある40代の女性は、胎児が心臓疾患などを伴う染色体異常の「18トリソミー」と診断された。生後1年以内に9割が亡くなるとされる。不妊治療の末、やっと授かった子どもだっただけに、女性は「できる限りのことをしたい」と小野さんに告げた。子どもは無事生まれたが、半年で死亡。「6カ月だけでも一緒に過ごせた」という女性に「人の価値観はそれぞれ。決め付けてはいけない」と実感したという。

 小野さんは「その子の一生に責任を取れるわけではない。生まれた後、両親にかかる負担を考えれば、両親の選択は仕方がない」と、複雑な心境をのぞかせる。

 「診断により、治らない病気が早期治療して治るようになれば、検査をやって良かったとなる。いつかそうなるといいですね」。優しい笑みを浮かべた。

 NIPT 検査は妊婦の血液を採血し、米国へ輸送。2週間後、病院に結果が送られてくる。検査が簡便なほか、羊水検査のような流産のリスクが低いため、近年受診者が増えている。滋賀医科大など全国の医療機関でつくる研究チームの調査では、NIPTの国内受診者は2013年4月の検査開始から年々増え、16年は約1万4千人に上る。

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