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受給者「薬選ぶ自由を」生活保護なら後発薬 法案

(2018年2月7日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

厚労省、医療費の抑制強化

画像厚労省前で生活保護費の引き下げなどに抗議する人たち=昨年12月、東京・霞が関で

 生活保護の受給者は先発医薬品を選ぶ権利さえ奪われるのか−。厚生労働省は受給者の処方薬を原則、安価なジェネリック医薬品(後発薬)に限定する法案を今国会に提出する。受給者らからは「差別的」「人権侵害だ」と反発の声が上がっている。(池田悌一)

 「男性のケースワーカーから以前、厳しい口調で『生活保護費は税金なんですよ。税金が無駄にならないよう、なるべくジェネリックを使ってくれなきゃ』と言われ、怖い思いをしたことがある。これが『原則』となると、使いたくなくても使うしかなくなる。私たちには薬を選ぶ自由もなくなるんですか。国による差別じゃないですか」

 生活保護を受給している埼玉県内の30代女性は、そう声を震わせた。

 後発薬は先発薬の特許が切れた後、同じ有効成分でつくられる薬だ。安全性や有効性が確認された成分を使うため、開発費が先発薬ほどかからず、価格を低く抑えることができる。

 厚労省が改正を検討しているのは、生活保護法の34条だ。現行では受給者の後発薬使用を「可能な限り促す」とあくまで努力規定の扱い。これを「原則として後発薬とする」などと踏み込んだ表現に改正し、年内に施行したい考えだ。

 なぜ、法改正が必要なのか。厚労省保護課の担当者は「一般の人には3割の自己負担があり、先発薬を選べばその分、負担額が増える。だが、受給者の医療費は全額公費で後発薬を使う割合が近年、伸びていない。増大する医療費を抑制するためだ」と説明する。

 医薬品代を含む受給者の医療費は、公費で全額を負担する「医療扶助」で賄われている。2016年度の生活保護費3兆6700億円のうち、医療扶助は1兆7600億円を占め、費目別の割合で最も多い。

 厚労省は医療扶助費を抑えるため、18年度中に受給者の後発薬使用割合を80%以上にする目標を掲げている。13年に48.2%だった使用割合は14年1月に努力規定が盛り込まれると急増し、14年は58.7%に。16年は69.3%にまで増えたが、17年(速報値)は71.9%と伸びが鈍化した。

 このままだと目標達成は困難な状況だが、先の女性は「国が『受給者に先発薬はもったいない』と言っているようなもので、偏見が助長されないか」とも心配している。札幌市の受給者男性(58)も「後発薬であっても、いただけるのはありがたい」としつつ「選択の自由も奪われることには抵抗がある」と懸念するなど反発は広がっている。

 半ば強制的といえる「原則化」までしなければいけないのか。厚労省の担当者は「後発薬が存在したとしても、医師が『使うべきだ』と診断した場合は先発薬を使ってもらう。薬局に後発薬の在庫がなければ先発薬でも問題ない。すべて後発薬になるわけではない」と理解を求めた。

 だが、後発薬には形状や添加剤が先発薬と異なるものも多い。精神科医の松尾徳大氏は「精神疾患のある受給者は少なくない。形状の違いが服用の拒否につながることもあり、添加剤によってはアレルギー反応を引き起こす場合もある。何よりも治療の選択権は患者にあり、同意があってはじめて後発薬を使うのが原則だ。インフォームドコンセント(十分な説明と同意)にも明確に反する」と法改正の動きを批判する。

 「生活保護問題対策全国会議」事務局長の小久保哲郎弁護士も「従来の努力規定だけでも、後発薬の利用は十分に進んでいた。それなのに受給者だけをターゲットに法制化するのは、あまりに差別的で不平等だ」と方針の撤回を求めた。

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