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スポーツで地域と接点 認知症 理解深める契機に

(2018年2月7日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像昨年9月に千葉県内であった「RUN伴」で、たすきをつなぐために走る参加者たち=千葉県内で(NPO法人認知症フレンドシップクラブ提供)

 認知症になり、スポーツを続けられなくなる人は多いが、認知症介護研究・研修大府センター研究部長で、神経内科医の小長谷(こながや)陽子さん(67)は「今までの生活を維持して、好きなこと、楽しいことをすること自体がリハビリになる。体を動かすスポーツはいい」と話す。一方、認知症の人と一緒にプレーする周囲の人には「病気について学ぶことが欠かせない」と求める。

 小長谷さんは「認知症の人はルールが分からなくなり、守れないことがある。周囲が病気の原因や特性を分かっていないと、サポートは難しい」と話す。特に若い世代には、認知症の人と接したことがない人が多く、理解を深めることが大切という。

 今回のソフトボールの試合では、部員たちは昨年12月下旬、八王子中で開かれた「認知症サポーター養成講座」に参加した。鈴木さんも今の生活や野球への思いを語り「昔は、最高120キロくらいは出た。みんなも出るだろうけど」と笑いを誘った。鬼頭さんは「症状は一人一人違う。様子を見ながら対応を考えると、いい笑顔がたくさん出てくる」と呼び掛け、部員たちの理解を促した。

 講座を受けた部員たちは冬休み中に、皆で楽しめる方法やルールをそれぞれ考え、試合前に話し合った。キャプテンの2年大橋憲慎さん(14)は「身近に認知症の人がいないので、ニュースで徘徊(はいかい)の話題を見て、本当にすぐ物忘れをする人なんだと思っていた。でも、実際に接してみると、多少分からないことがあっても、こちらが声を掛ければ理解してくれた」と話す。

 認知症の人と地域の人がスポーツを通して触れ合うイベントなどは、増えつつある。認知症の人と家族、地域住民らが一緒にたすきをつなぎ、走ったり歩いたりするイベント「RUN伴(ランとも)」もその一つ。認知症の人が暮らしやすいまちづくりを目指すNPO法人「認知症フレンドシップクラブ」(東京都武蔵野市)が企画し、各地の実行委員会と協力して開いている。

 参加チームごとにたすきをつないで他チームと競争するのではなく、参加グループが自分たちの受け持つ距離を走ったり歩いたりして、次のグループにたすきをつないでいく。全区間を参加者全員でたすきをつなぐのが特徴だ。

 2011年、北海道で171人が参加して始まり、開催ごとに参加者が増え、全国各地で実行委が組織され開催されるようになった。17年は33都道府県の341市区町村で開かれ、計1万4521人が参加。その1割ほどが認知症の人だった。

 1グループは3人以上で、施設職員と利用者で参加する例もある。認知症の人も必要なケアや支援を受けながら、決められた距離を歩いたり、走ったりして楽しんでいる。

 小長谷さんは「1回限りではなく、継続的に出掛けられるような場にするのが大事」と言う。同法人理事の徳田雄人(たけひと)さん(39)は「認知症の研修会はよくあるが、当事者との接点が乏しい会もある。認知症の人が本当に困っていることが分からないままでは、暮らしやすいまちにはつながらない」と話す。

 各地の実行委員会の中には、イベントでできたつながりを生かし、認知症の人も一緒に楽しめるソフトボールや登山、コンサートなどのイベントを企画するところも出てきた。徳田さんは「認知症がある人との接点をつくり、地域で暮らす上での困りごとを共有していきたい。RUN伴をきっかけに、各地域で当事者の声を聞き取れる環境が整っていくといい」と話す。

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