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高齢者見守る機器研究 富山県立大 松本三千人さん

医人伝

(2018年2月13日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

富山県立大(富山県射水市) 工学部教授 松本三千人さん(65)

画像高齢者の見守りシステムについて語る松本三千人さん

 一人暮らしの高齢者の体調不良を機器が検知し、緊急時は病院への迅速な搬送につなげる。そんな高機能センサーを活用した高齢者の見守りシステムを研究している。狙いは孤独死の防止だけにとどまらない。

 「日本人は平均寿命と健康寿命に10年ほど差がある。亡くなる直前まで元気に過ごせるようにしたい」。人が介護を受けるようになる原因で、最も多いのは認知症。見守りシステム実用化の狙いは、この認知症の早期発見にある。

 富山県射水市内の高齢者向け住宅で計測実験を進めている。使うのは、人の動作を電波で捉えるドップラーセンサー、体の表面温度を測るサーモセンサー、腕の動きを検知する腕時計型の機器。ベッドには圧力センサーを取り付け、負荷のかかり方から呼吸の状態や体重の変化を記録している。

 得られたデータを組み合わせると、体重の増減や睡眠状態、外出の頻度などが分かる。認知症の初期症状は睡眠障害、活動量の低下、体重の減少などが知られている。「予兆に気付けば、生活に支障が出る前に治療を勧められる」と力を込める。

 今後は、一般住宅でドップラーセンサーだけを使った実験を始める。認知機能の低下は歩き方に影響するとされるため、センサーを用いた簡単な歩行検査も検討している。「センサーを全ての家に取り付けるのは現実的ではない。歩行検査と併せて、システム全体で認知症の初期症状を見つけたい」と話す。

 出身は北九州市。電電公社(現NTT)電気通信研究所を経て、福岡市の研究所で映像や音声の通信技術を利用した障害者の外出補助システムを開発した。「身近に障害のある方がいて知識を役立てたかった。自分も研究してきたICT(情報通信技術)の恩恵は、若者だけでなく高齢者にも受けてもらわなければ」との思いが根底にある。

 総務省SCOPE(戦略的情報通信研究開発推進事業)に採択された見守りシステムの開発研究は、センサー技術の活用だけでなく、高齢者の既往症や飲み薬などの情報が入った「命のバトン」の電子化なども盛り込んでいる。だが、全てが実用化できるとは思っていない。「一部だけでも実現し、高齢者が安心して暮らせる地域づくりにつなげたい。認知症の人をみんなで見守る機運をさらに高めていく」と優しいまなざしで語った。 (山本拓海)

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