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CHUKYO GROUP PRESENTS 目の健康講座 読む楽しさ、いつまでも健康な目で―。 ものが歪んで見える! 虫が飛んでる?! それって怖い病気かも?知っていますか? 飛蚊症から加齢黄斑変性症まで色々

 新聞や本を読んだり、テレビやパソコン、スマートフォンの画面を見たり、人間は外部から得られる情報の多くを視覚に頼っています。それを支える重要な器官が「目」です。高齢化が進む現代社会では、加齢に伴う目の病気が増えており、「歳だから仕方ない」とがまんしていると、大切な視力を失うことになりかねません。毎日をいきいきと暮らすために欠かせない「目の健康」。それを脅かす病気について、専門医の皆さんにご説明いただきました。

欧米では成人の失明原因一位 日本でも増加中!

独立行政法人 地域医療機能推進機構 中京病院 眼科 横山 翔先生 人間の視覚は、眼球の奥に広がる「網膜」がモノの大きさや形、色などの情報をキャッチし、視神経から脳へと伝えることで初めて成り立ちます。その網膜の中央でもっとも視力に関与する部位の「黄斑(おうはん)」に障害が起きるのが「加齢黄斑変性」です。

 緑内障や白内障に比べるとあまり知られていませんが、欧米では失明の主な原因として知られています。従来、日本では比較的少なかったのですが、最大の原因が「加齢」であることから、社会の高齢化に伴い増加し続けています。ほかにも喫煙習慣が明らかなリスク要因として認められ、欧米化した食生活なども一因として疑われています。

 最初に病気に気付くきっかけとして多いのは、視力の低下をはじめ、視界の中心にあるモノがゆがんで見えたり、ぼやけるようになることです。やがて進行すると中心部に黒い影のようなもの(中心暗点)が現れ、末期になると視界の中心部がすっぽり穴が開いたように見えなくなります。そして、光を失うわけではないものの、実質的に視力がなくなる「機能的失明」となります。

月に1度の注射治療で多くは症状が改善

飯田市立病院 眼科 森 俊男先生 加齢黄斑変性には2つのタイプがあります。1つは黄斑の組織が加齢に伴い萎縮するもので、確立した治療法はありませんが、病気の進行は遅く、急激に視力低下をきたすことはないため、定期的に経過を観察します。

 もう一つのタイプは、黄斑部から「新生血管」という異常な血管が発生し、そこから血液成分が漏れ出すことで網膜が腫れたり、液体が溜まったりして組織を破壊するものです。進行が早く視力低下につながりやすく、日本人に多いのがこのタイプです。

 加齢黄斑変性のもっとも一般的な治療は、月に1回、眼内に薬を注射して、新生血管の増殖と働きを抑えるものです。目に注射を打つと聞くと恐ろしい気がしますが、点眼の麻酔薬を使って極細の注射針を刺すものですから、個人差はあるものの痛みというより違和感がある程度です。症状にもよりますが多くは1~3回の注射の後、経過を見ながら治療を継続するか判断します。

 従来、加齢黄斑変性の治療法は、病気の進行を抑えて視力の低下を防ぐことが目標でしたが、新生血管の増殖と働きを阻害する注射薬が登場してからは、症状の改善が期待できるようになりました。

 ほかに症状に応じて、新生血管をレーザーで焼く治療法を注射と併用することもあります。

50歳を過ぎたら定期検査で早期発見を

 このように加齢黄斑変性は、治療すれば症状の改善が見込めるようになりましたが、視力が正常に戻るまでには至りません。そのため大切なのは病気が進行する前に発見し、適切な治療を受けることです。ところがやっかいなことに、加齢黄斑変性の症状の多くは片方の眼からしか現れません。人間の眼は片方の眼が悪くなったとしても、もう片方の眼で視野や視力を補ってしまうため、片目を閉じて初めて症状に気付く人も少なくありません。ウェブサイトなどに掲載されている自己チェックシートなど利用し、もし異常があれば眼科を受診しましょう。

 加齢黄斑変性は、たとえ自覚症状が軽くても病気が進行していたり、同じ症状で別の病気ということもあるので自己判断は禁物です。まずは加齢黄斑変性という病気について知ってもらい、50歳を過ぎたら眼科医のもとで定期的に検査を受け、目の病気の早期発見・早期治療につなげてください。

「飛蚊症」は検査で原因を調べよう

社会医療法人 大雄会 大雄会クリニック 中京病院 眼科 小口 優先生 加齢黄斑変性同様、加齢が主な原因で発症する病気に「飛蚊症(ひぶんしょう)」があります。文字通り視界に虫のようなものが飛んで見える目の病気で、見えるものの形状は糸のようだったり、黒い線や点だったりいろいろです。

 その正体として圧倒的に多いのが「硝子体(しょうしたい)」の中に浮遊する正常な細胞の成分や繊維です。 硝子体とは眼球内に詰った透明なゼリー状の組織で、その中の浮遊物が網膜に影を作ったり、硝子体が濁ることで虫のように見えるわけです。これらはほとんど加齢に伴う生理現象のようなものなので、治療の必要はありません。最初は気になってもだんだん慣れてきて、そのまま忘れてしまう人もいるほどです。

 ただし、ほかの病気が原因となって飛蚊症の症状が現れることがあります。その場合は放置すると失明の危険もあるので要注意。しかも、症状だけで原因を見分けることはできません。 飛蚊症を知っている人の中には、単なる老化現象と思い込んでいる人も多いようですが、「飛蚊症かな?」と思ったら、まずは眼科を受診して検査を受け、飛蚊症の原因を調べることが大切です。

飛蚊症を起こす病気に要注意!

日本赤十字社 岐阜赤十字病院 眼科 市川 慶先生 では、飛蚊症が症状として現れる重大な病気にはどんなものがあるでしょう。代表的なものが「網膜裂孔(れっこう)」と「網膜剥離(はくり)」です。網膜に穴が開く「裂孔」から、剥がれる「剥離」へと進行することが多く、視細胞の機能が低下し、視野が欠けるなどの症状が現われます。

 網膜裂孔、網膜剥離は加齢によって起こる以外に、若い人でも強度の近視により起こるので注意が必要です。網膜裂孔の段階であればレーザーで治療できますが、網膜剥離になると手術が必要となります。網膜細胞の機能が失われてしまってからでは、治療しても視力や視野の回復はあまり見込めません。また目の中に炎症が起こる「ぶどう膜炎」でも飛蚊症が見られます。中には失明に至る場合もあるので、侮ってはいけません。

 さらに、一度は受診して治療が必要ないと診断された人の中にも、後に別の病気で飛蚊症が現われていることもあります。今までと異なる見え方であったり、眼痛やまぶしいなど他の症状が現われた際は、必ず眼科を受診してください。

 世界有数の長寿国となった日本ですが、自立して暮らすことのできる「健康寿命」と平均寿命との間には、10年前後も差があるとされています。健康寿命をできる限り延伸し、元気で生き生きと人生を楽しむためにも、「目の健康」は欠かすことができません。これを機に加齢とともに増えてきた目の病気について、正しい知識を持つ大切さを知り、目の健康を維持するための検診や生活習慣の改善を心掛けてください。

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