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正しく理解し、早く見つけて、地域で暮らそう生き生きと 地域で支える認知症

急速に高齢化が進む日本では、“老い”に伴う代表的な病気「認知症」が増加の一途をたどっており、全国で約800万人が認知症もしくは認知症予備軍とされています。しかも、現代の日本社会では3分の2の世帯が高齢者のみか高齢者1人であり、介護の問題も深刻です。そんな中大切なのは、誰にとっても認知症は無縁でないことを自覚し、正しい理解への一歩を踏み出すこと。その案内を認知症のエキスパートである鳥羽研二先生にしていただきました。 独立行政法人 国立長寿医療研究センター病院長 鳥羽 研二先生

偏見なくして正しい理解を! 人としての豊かな感情はそのまま

 世界の最長寿国となった日本で「認知症」は国民病と位置づけられる時代を迎えています。そんな中、認知症への正しい理解が進んでいるかといえば、むしろ偏見や誤解に満ちた状況といえるでしょう。「認知症は何も分からなくなる病気、人間としての理性が失われる病気」といったことが聞かれるからです。
 しかし、それは大きな間違いです。認知症になっても、人としての豊かな感情は最後まで失われず残るからこそ、病気への不安や憤りから、攻撃的な行動を招くこともあります。認知症を正しく理解することは、認知症を患う家族との時間を少しでも笑顔の多いものにするための第一歩であり、自分自身が認知症を患うときの準備としても大切なことです。

認知症高齢者の割合

偏見なくして正しい理解を! タイプにより現れる特徴的な症状

認知症の原因疾患別割合

 では、「認知症」とは医学的にどんな病気なのでしょう。一言でいえば、正常な発達を通して獲得した認知機能が、脳の神経細胞が壊れることにより持続的に失われ、生活機能が低下していくというものです。主に4つのタイプがあり、これらで認知症の95%以上を占めています。
 4つの認知症はそれぞれに特徴的な症状があり、たとえば「挨拶」を例にとると、「アルツハイマー病」では愛想が良く、「血管性認知症」は律義、「全頭側頭型認知症」ではぶっきらぼう、「レビー小体型認知症」ではおっくうがるといった具合。これは障害を受ける脳の部位が異なることから生じるもので、身体的な症状にも特徴があります。
 認知症の診断については、「もの忘れ外来」や精神科・神経科などの専門医でないと難しいとされていましたが、近年は適切に診断できる知識と技術および、家族の話や悩みを聞く姿勢を習得した「認知症サポート医」が増えています。専門医の受診に抵抗がある場合は、身近なかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。

偏見なくして正しい理解を! 気づくタイミングと受診のきっかけづくり

 次いでどうしたら認知症に気づくかということですが、認知症の多くは発症から10年以上かけて少しずつ生活機能が低下し、複雑な行為から順にできなくなります。最終的には排泄や食事など生命維持に関係する行為も自力でできなくなりますが、それは亡くなる前の数年です。
 家族が最初に気づくきっかけとして多いのが「同じ話を何度も繰り返す」、「続けてきた趣味に関心がなくなる」、「探しものが増える」などです。高齢になればもの忘れは増えますが、単なる「もの忘れ」と「認知症」の大きな違いは、認知症は症状が進行し、必ず生活に支障が生じてくることです。他の病気なら自分で受診しますが、認知症を疑って自分で病院に行く方はほとんどいません。多くは家族など周囲の方の気づきに頼ることになります。明らかにおかしい症状が現われたときには、すでに進行していることが多いので、小さなサインに注意を払う必要があります。
 一方、「もしや・・・」と思ってもなかなか本人に受診を促すのは難しいものです。高齢になれば、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症など何らかほかの病気や不調を訴えることが多いので、「健康診断」として受診することで、早期発見につなげてください。

「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」

偏見なくして正しい理解を! 早期発見で適切な治療を

認知症 気づきのサイン

 ほかの病気と同じように、認知症も早期発見による、適切な治療で進行を遅らせることができます。「薬物療法」に用いる薬は現在数種類あり、ひとつは「中核症状」と呼ばれる、記憶障害や判断力の低下に働きかけ、生活機能の低下を遅らせるもの。もうひとつは「周辺症状」と呼ばれる、徘徊や暴力行為、妄想などの二次的な症状がひどい場合に抑えるもので、こちらは長期に服用するものではありません。
 一方、私たちの研究では、薬物療法だけに頼っても効果が弱く、リハビリテーションなどの「非薬物療法」に高い効果が期待できることがわかってきました。特にアルツハイマー病は、初期段階ほど脳やからだを使うことで症状の進行を防ぐ効果が高いとされています。
 認知症の方を支える家族や周囲の苦労は大変なものですが、本人のプライドを傷つけないコミュニケーションを通して、生活の範囲を狭めず、笑顔のある生活の創造をめざしましょう。そのためには「対応」のページで紹介している対応の仕方や介護保険が利用できるサービス活用も参考にしてください。
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