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ピロリ菌を除菌し胃がん予防! 60歳以上で約半数の日本人が感染しているとされる「ピロリ菌」は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となるだけでなく、
日本人に多い「胃がん」の原因として認められています。
そんな中、2013年ピロリ菌を除菌する治療の保険適用が拡大され胃がん予防への意識の高まりが期待されています。
これを機に改めてピロリ菌と胃がんの関係、胃がん予防につながるピロリ菌除菌について名古屋大学・浜島信之教授にお話をお聴きしました。 名古屋大学大学院医学系研究科 浜島信之教授 1955年生まれ。
名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。予防医学を専門とし、伊賀市との連携でピロリ菌の検査と除去による胃がん予防事業を主導。現在は、国内4大学のみが採択された「ヤング・リーダーズ・プログラム」の名古屋大学の責任者として、アジアの医療ネットワークづくりに取り組んでいる。

日本人の胃がんの主な原因「ピロリ菌」

 日本は世界でも有数の胃がん大国であり、近年減少傾向にあるとはいえ、今なお年間10万人以上が罹患し、約5万人が死亡しています。胃がんの原因には塩分の過剰摂取や喫煙などの危険因子が明らかになっていますが、中でも「ヘリコバクター・ピロリ」(ピロリ菌)と胃がん発症は密接な関係があります。
 ピロリ菌に感染し、菌が胃の粘液の中で増殖すると、毒素を作り出して胃の粘膜を構成する細胞を壊します。そこに胃酸が流れ込むと胃の炎症が続き、粘膜が萎縮します。保菌状態が長く続くほど胃がん発症のリスクが高まります。一度ピロリ菌に感染して、自然に排除することは稀です。
 しかも、日本人が感染しているピロリ菌は、東アジア型の毒素を持ち、欧米型に比べて毒性が強いことがわかっており、日本人の胃がんの多くがピロリ菌感染によるものだとされています。
 ピロリ菌は、水洗トイレがなかった時代に免疫力の弱い乳幼児が、便器を触った手をなめたり、保菌者である大人からの口移しによる経口感染が主で、衛生状態が悪い時代に乳幼児期を過した60歳代以上の半数以上が保菌者とされています。衛生環境が整ってから誕生した若年層の感染率は減少していますが、がん年齢となった方たちの中には、ピロリ菌に感染している自覚がないまま胃がんのリスクを抱えている方が多くいることが危惧されます。

ピロリ菌の除菌は胃がん予防の有効策

 ピロリ菌の感染は、検査薬を服用し息を採取する呼気検査や血液検査、便検査など、いずれも身体的な負担のない手軽な検査で調べることができます。菌が少ないと陰性になることが稀にあります。
 ピロリ菌の除菌治療は、3種類の薬を1週間服用するというもので、副作用は軟便、下痢、じんま疹や除菌後の胸焼けがある程度で、重篤なものはほとんどありません。近年薬に耐性のあるピロリ菌が出現したことで除菌効果が70%弱に落ち込んでいますが、除菌できなかった方は薬を変えてさらに1週間服用することで、トータル90%以上の方が除菌に成功しています。
 今までピロリ菌の除菌治療は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症した人でないと保険適用されませんでしたが、今ではピロリ菌感染がわかり、内視鏡でピロリ菌感染胃炎と診断されれば、保険の適用で除菌治療が受けられます。
ピロリ菌の除菌は胃がんの予防に有効なだけでなく、早期胃がん切除後の新たながんの発生率が約3分の1になるという研究結果も出ています。

ピロリ菌の検査方法 内視鏡を使う検査方法 培養法 採取した胃の粘膜をピロリ菌の発育環境下で5~7日培養して有無を判定します。 組織鏡検法 採取した胃の粘膜に特殊な染色をして、顕微鏡を使いピロリ菌の有無を調べます。 迅速ウレアーゼ試験 ピロリ菌が持つウレアーゼという尿素を分解する酵素の活性を利用して調べます。 内視鏡を使わない検査方法 尿素呼気試験 診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。 抗体法 ピロリ菌に感染することでできる抗体の有無を血液や尿で調べます。 抗原法 ふん便中のピロリ菌の抗原を調べます。

定期健診と予防で「胃がん」は怖くない

 現在、日本では年間約35万人以上の方が「がん」で亡くなっています。その中で「胃がん」はピロリ菌の除菌により予防が可能です。がん年齢を迎えてもピロリ菌感染の有無を知らない方は、速やかに検査を受けることをお勧めします。特に胃の不調を頻繁に感じる方は、ピロリ菌の感染によるピロリ菌胃炎かもしれません。多くの方は自覚症状があっても市販薬で済ませたり、がまんしがちですが、自己判断せず内視鏡検査を受け、ピロリ菌感染が原因であれば除菌治療を受けてください。
 また、除菌治療を受けたからといって、胃がんの芽を摘むことはできません。胃がん発症にはピロリ菌以外に生活習慣が深く関係しているので、健康的な生活を心がけるとともに、ピロリ菌に感染していた人は、定期的な検診による早期発見を心がけることが何より大切です。
 胃の内視鏡検査は、機器の進展により身体的な負担が大きく軽減できるようになりました。多くのがんの中で、「胃がん」は早期発見・早期治療により完治の可能性が高いがんです。胃がん予防のために、ピロリ菌検査・除菌治療を受けるとともに、胃がんから大切な命を守るためには、がん年齢になったら定期検診を受けましょう。
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