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ピロリ菌を除菌し胃がん予防!慢性胃炎の除菌治療が保険適用に

 ピロリ菌感染が原因の「慢性胃炎」に対する除菌治療に、健康保険が適用されることになりました。除菌治療には胃がんの予防効果があることがわかっており、保険適用により治療を受ける人が増加すれば、胃がんの減少につながることが期待できます。そこで愛知医科大学の春日井邦夫教授に、ピロリ菌と胃がんの関係や除菌治療について、わかりやすく教えて頂きました。 愛知医科大学 内科学講座消化器内科教授 春日井 邦夫(かすがい くにお)先生 1985年名古屋市立大学医学部卒業、91年名古屋市立大学病院。97年愛知医科大学講師。99年アメリカ留学などを経て2007年愛知医科大学内科学講座消化器内科教授。11年愛知医科大学病院副院長。
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日本人のがんで最も多い「胃がん」

 日本は年間10万人以上が「胃がん」にかかる、世界有数の胃がん大国です。その原因として塩分の多い日本人の食生活が広く知られていますが、胃がん患者の多くはピロリ菌に感染していることも判明。日本人の「ヘリコバクター・ピロリ」(ピロリ菌)への感染率の高さが、胃がんの罹患(りかん)率の高さに影響していることがわかっています。
 ピロリ菌とは、胃の粘膜に感染し、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などを引き起こす細菌です。感染したまま自覚症状がない人も多く、保菌状態が長く続くほど胃がんの発生リスクが高まるとされており、世界保健機関(WHO)では、ピロリ菌を喫煙と同じ強力な発がん因子として認定しています。
 ピロリ菌は主に経口感染をすると考えられています。免疫力が弱い乳幼児期に口移しで食べ物をもらうなど大人から感染する可能性が高いと考えられ、親子で感染している場合も少なくありません。また、衛生状態の悪い井戸水なども感染の原因とされており、上下水道が整備され衛生環境が整った現在の日本では、若年層の保菌者が少なくなっていますが、それでも国民の半数、50歳以上の中高年では70%が保菌者とされ、自覚のないまま胃がんのリスクを抱えている人が多数いることになります。

保険適用が拡大したピロリ菌の除菌治療

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 そんな中、今まで胃潰瘍、十二指腸潰瘍など比較的重篤な疾患に対してのみ保険適用されたピロリ菌の除菌治療が、2月下旬から慢性胃炎にも適用されることになりました。保険適用のためには内視鏡検査(胃カメラ)を受けて胃炎を確認することと、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を受ける必要があります。ピロリ菌感染が原因の慢性胃炎に保険適用が拡大されたことで除菌治療者が増加し、胃がん減少への期待が高まっています。
 除菌治療は、2種類の抗生物質と胃酸を抑制する薬を1週間服用します。近年は薬に耐性のあるピロリ菌も出現し、除菌効果は約70%程度にとどまっていますが、初回に除菌できなかった場合は薬を変えて再除菌します。これにより最終的に約95%の人が除菌できます。薬の主な副作用には下痢などがありますが、服用を止めるほど重篤な症状がでることはほとんどありません。治療後は放置せず必ず1ヶ月後に判定し、確かに除菌できていることを確認してはじめて除菌成功といえます。

保険適用の条件→内視鏡検査で胃炎を確認 ピロリ菌の感染を確認
ピロリ菌の検査方法
内視鏡を使う検査方法 内視鏡を使わない検査方法
培養法
 採取した胃の粘膜をピロリ菌の発育環境下で5~7日培養して菌の有無を判定します。
尿素呼気試験
 診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。
組織鏡検法
 採取した胃の粘膜に特殊な染色をして、顕微鏡を使いピロリ菌の有無を調べます。
抗体法
 ピロリ菌に感染することでできる抗体の有無を血液や尿で調べます。
迅速ウレアーゼ試験
 ピロリ菌が持つウレアーゼという尿素を分解する酵素の活性を利用して調べます。
抗原法
 ふん便中のピロリ菌の抗原を調べます。

リスクを認識し健康な生活を

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ピロリ菌に感染している胃粘膜(写真右)は、感染していない胃粘膜(写真左)に比べて表面がざらついて赤い斑点が確認できる。(春日井先生提供)

 胃の不調は風邪と同じように多くの人が経験するため、我慢してしまうことも多々あります。しかし、それがピロリ菌感染による慢性胃炎であれば、胃がんのリスクがあるということです。胃の不調を感じたら「たかが胃炎」と自己判断せず、これを機に内視鏡検査を受けましょう。
 また、自覚症状がなくてもピロリ菌の感染を調べることは大切です。特に若い人は除菌による胃がんの予防効果が高いとされており、高校生のピロリ菌検査に取り組む自治体も出ています。ピロリ菌感染の有無を調べる検査は、検査薬を服用し息を採取して調べる呼気検査や血液検査などいずれも簡単にできます。自分がピロリ菌の保菌者であるかどうかを確認することで、胃がん予防につながります。
 ピロリ菌感染による慢性胃炎が進み一度萎縮性胃炎が起こると、ピロリ菌の除菌治療を行ったとしても完全には胃がんの発生を抑えることはできません。しかし、除菌治療を行った上でピロリ菌を保菌したことによる胃がん発生のリスクを認識し、定期的な検診を受けることで胃がんの早期発見が可能になります。
 現在、日本人の2人に1人はがんにかかるといわれ、死因の第一位を独占しています。その中で「胃がん」は、早期発見さえすれば完治可能な数少ないがんの一つです。
 早期治療であれば身体的負担の少ない内視鏡治療も可能になります。"治るがん"をみすみす見逃さないためにも、特に40歳以上の方は定期的に検診を受けましょう。そして、健康な生活を保ち続けていきたいものです。 企画・制作/中日新聞広告局

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