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頼れるかかりつけ医を持とう 名古屋大学大学院医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学分野 教授 葛谷 雅文先生

住み慣れた地域で人生をまっとうする

看取り場所の推移

 かつて日本では、80%以上の方が住み慣れた自宅で人生の最期を迎えていた時代がありました。やがてそれに取って代わるように病院で亡くなる方が増え続け、1970年代後半には逆転。2009年には約80%の方が、病院で最期を迎えています。
 「在宅医療・介護」への流れの背景には、国民一人当たり30万円を突破してなお増え続けている医療費の急増がありますが、医療経済の事情で在宅へという流れが進められるのは本末転倒です。住み慣れた地域、自宅で人生の最期を迎えたい。そう強く望む人のために環境を整えるべきだと思います。
 厚生労働省の調査では、高齢者の7割が「介護を受けながら自宅で暮らしたい」という結果がでており、同省では高齢者が住み慣れた地域で医療や介護などのサービスを切れ目なく一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」を推進しています。これが実現すれば介護が必要になっても自宅で必要なときに医療、介護、介護予防、生活支援、住まいの各種サービスが一体的に受けられるようになります。

医療と介護にかかわる多他職種連携の重要性

在宅医療推定患者数の推移

 現在、地域医療に関しては病院と病院、病院と診療所といった連携が進んできており、高度な検査や治療が必要な場合は、診療所から専門医や医療設備が整った病院に紹介し、症状が落ち着いた後は再び診療所を受診するスムーズな連携ができつつあります。
 しかし、地域包括ケアとなると医療と介護それぞれの分野の人たちがかかわることになり、その連携がうまくいかなければ地域包括ケアも機能しません。近年は医療と介護、それぞれの分野で活躍する多職種の人が集まり情報交換をするなど、交流の場となるワークショップも盛んに開催されるようになりました。今後は連携強化への取り組みが加速することを期待しています。

誰もに共通する問題 日頃から準備が大切

 このような在宅医療・介護の現状を踏まえ、一般の方はどんな心構えや準備ができるのでしょう。現在、自宅で介護サービスを受ける際、まずお世話になるのが介護支援専門員(ケアマネジャー)です。ケアマネジャーの役割とは、介護保険を利用する際の利用者さんとご家族の良き相談役ですが、健康なときに接する機会はほとんどありません。いざとなってから焦らないためにも、先のことを考えた心の準備や、介護の基本的な知識を得ておくことが必要だと思います。
 そのためには家族全員のことを知ってもらえる、身近な「かかりつけ医」を持つことが誰にでもできる最適な準備といえるでしょう。地域のかかりつけ医の多くはケアマネジャーや訪問看護師とのネットワークを持っており、紹介してもらうこともできます。日頃から高齢家族の健康相談や、介護についても相談できるかかりつけ医が理想といえます。
 また、在宅介護は本人が希望しても、それを支える家族がいなければ成り立ちません。介護サービスを上手に活用して負担を減らしながら、本人と家族が納得できる生活をできるだけ長く継続し、それが難しくなったときは無理をせず介護施設という選択肢も考えたいものです。
 そして何より大切なのは、介護が必要になる時期をできる限り遅らせる「介護予防」です。早い時期から生活習慣を見直すことで、長くなった人生を健康で暮らす元気高齢者が増えることを願っています。

早い時期から訪問看護や  病院看護師とのかかわりを

国立長寿医療研究センター 長寿看護・介護研究室長 大島 浩子氏

 在宅医療・介護とは、高齢者が住み慣れた地域で、安心・安全に最期まで過せるよう支援するものですが、その体制はまだ量・質ともに十分とはいえません。そんな中、地域包括ケアシステムの実現に向けて、市町村が在宅医療の中心的な拠点となり、地元医師会との協力のもと病院や診療所、訪問看護などと連携する体制が整備されています。これら在宅拠点は、各地の24時間在宅医療・介護の提供体制、会議や研修、地域住民の皆さんへの啓発活動や、在宅医療に携わる人材の育成などに取組まれています。
 一般の皆さんの中には、「訪問看護」という言葉もご存じなく、自宅で家族を看取るなどできるはずがないと思い込んでいる方が少なくありません。しかし本人と家族の希望があれば、在宅医療・介護サービスを上手に活用することで、自宅の看取りも可能です。
 そのためにはまず、かかりつけ医師をみつけてください。そして、介護保険の活用のため介護認定を受けてください。そして、介護度が低いうちからでも、病院や訪問看護ステーションの看護師とかかわりを持ち、今後のケアについて家族が心がけることや、看取りについても相談できる関係を築いてほしいと思います。
 医療従事者である訪問看護師は、利用者さんの身体の状態や病気の進行を把握し、適切なケアを行うのはもちろん、利用者さんと家族とのコミュニケーションの橋渡しをしたり、家族には伝えづらい患者さんの本音を聞いてもらうなどメンタル面でのケアもできます。 ほかにも在宅でのケアが困難になったとき、入院や施設への入所を考えるタイミングも相談できると思います。初めて自宅で療養生活に入る方は、訪問看護サービスの活用を通し、長期間支えてもらえる、信頼できる訪問看護師を見つけてほしいと思います。

企画・制作/中日新聞広告局

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