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第19回

良い医師を育てるために

2011年12月22日

 今週は「臨床研修制度」について、書きます。
 ちょっと堅苦しい話ですが、医学生が一人前の医師になっていく過程で必ず通る道。医療の土台にかかわるテーマです。

 厚生労働省が2015年に改正をめざしている臨床研修制度について、先日、東大で、医学生たちと日本医師会役員の意見交換会がありました。主催したのは、「医師のキャリアパスを考える医学生の会」。東大、慶応大、防衛医大など各地の医学生有志が、自分たちの将来について勉強し、社会に向けて発言していこうと活動しています。

自由選択制と医療崩壊

現行制度では、医学生が6年間の医学部教育を終えて医師国家試験に合格した後、医師としてのスタートを切る2年間の研修先を、病院と交渉して選べる形になっています。それまで、大学の医局が人事権を一手に握り、若手が劣悪な労働条件で研修していたことの弊害を改める目的で、2004年に改正されました。
 しかし、ただでさえ医師不足の中で「自由選択制」が導入されたために、都市部の有力病院を志向する研修医が増え、地方の大学の医局や病院に人材が不足する事態になりました。病院の医師が大学に呼び戻されて診療が成り立たなくなったり、過酷労働に疲れ果てた勤務医が病院を去っていったりして、地域医療の崩壊が進みました。


今村常務理事に質問する医学生

 この日の意見交換会では、日本医師会の今村聡常任理事が、臨床研修制度の医師会案について説明しました。
 ① 大学ごとに臨床研修センターを設置して、研修医と大学の結びつきを強める。
 ② 各センターを束ねる臨床研究機構を都道府県ごとに設けて、地方に医師を戻す。
などがポイント。「自由選択制」に多少の枠を設けて、都道府県ごとに研修医の数を調整する機能を持たせようという提案です。
 これに対し、医学生らから、なかなか手強い反論がありました。
 地方の国立大医学部の6年生は「別の地域の病院を希望したら、大学側に抑え込まれる恐れがある。そうなったら学生の立場は弱い」と危惧しました。
 女性の研修医は「都会から地方の医大に入る学生も多い。卒業後に親元から通える研修先を希望するのは、生活費や結婚後の問題を考えても、自然な流れだと思う」。
 今村常任理事も、丁寧に耳を傾けつつ「医学を学んだ地域で、まず地域医療を手がけるという考え方もあるのでは。すべてフリーでいいのだろうか」と意見を述べていました。
 地域医療の再生は、臨床研修制度をさわるだけで解決する問題ではなく、もっと根本的な議論が必要、という点で両者が一致しました。
 参加した医学生の大半は、現行制度で研修医生活を送るので、直接の影響はありません。でも、後輩たちのためにも、これからの日本の医療のためにも言わなくちゃいけない、という意気込み、とても頼もしく感じました。

幅広い診断能力と人間性を備えた医師がたくさん育っていかなければ、これからの高齢社会は支えきれません。よりよい臨床研修制度ができるように、一般の方もぜひ関心を持ってほしいものです。

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執筆

安藤 明夫

編集委員

生きがい、生活習慣病予防、心の健康・・・医療記者としての取材体験を自分自身の「これから」に重ねて、つづっていきます。