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第34回

326グラムの奇跡

2012年4月5日

 326グラムの超低体重で生まれた女の子・吉岡生未(いくみ)ちゃん(6つ)が、6日に大阪府松原市の小学校に入学する話題を、昨日(4日)の夕刊で書きました。
 妊娠6ヶ月での帝王切開。生存が難しい「400グラム未満」の出生で、奇跡的な成長を遂げたという話題です。
 【関連記事】326グラムで誕生、小学校入学へ ランドセルに大きな希望

 記事とは角度を変えて、母親のみゆきさんにスポットを当ててみます。 


生未ちゃんとみゆきさん(撮影・今泉慶太)

 「10歩ほどだけど、歩けるようになったんです」
 「私以外には分からない言葉だけど、なぜか意志が通じるんですよ」
 「てんかんの大発作があったときは本当に心配したけど、今は薬が合って発作が止まっています」
 
 生未ちゃんを語るみゆきさんの言葉は、いつも肯定的です。「できない」という否定形がめったにありません。
 けがなどの失敗談も、大阪流のユーモアにくるまれ、明るい笑い話に変わります。
 障害のある子を育てるのは、通常の子育てとは違うストレスがのしかかってくるものですが みゆきさん、メンタルヘルスの達人でした。

  誇りと協力と

 なぜ、こんなに前向きになれたのか。
 一番の要因は、記事にも書いたように「わが子への誇り」。
 生未ちゃんは保育器の中、生死の境で戦い続け、医療スタッフが驚くほどの成長を遂げました。半年はかかると思われていた人工呼吸器も、3カ月で外せました。
 そのとき、初めてみゆきさんが入浴を担当したのですが、“浴槽”は、直径15センチほどのボウル。
 手のひらに乗せ、宝物を扱うように、そっと湯に浸して、背中やおしりを洗いながら、みゆきさんは「母親らしい仕事ができた喜び」で胸がいっぱいになったそうです。それまで、母乳をあげることもできなかったのです。
 生未ちゃんと一緒に、みゆきさんも大変な時期を乗り越えてきたのだと感じました。

 夫の宏昭さんの協力も見逃せません。
 疲れたときに、宏昭さんに育児を任せて岩盤浴に出かけたり、友達とおしゃべりしたりすることで、ストレス解消ができたそうです。 
 両親・祖父母の愛情に包まれて育った生未ちゃんは、おてんばで、笑顔のかわいい子。保育園の友達も、小学校で生未ちゃんの世話をするのを楽しみにしているとか。
 いい循環で子育てができているのを感じます。


いつかランドセルを背負って歩ける日が・・・

 入学を前に、みゆきさんが選んだのは、キャンディーの絵が付いたかわいいランドセル。
 いつか、このランドセルを背負って、一人で歩いて登校する日が来るのでは、と楽しみにしています。

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執筆

安藤 明夫

編集委員

生きがい、生活習慣病予防、心の健康・・・医療記者としての取材体験を自分自身の「これから」に重ねて、つづっていきます。