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第55回

医学部人気の陰で・・・

2012年9月6日

 先日、高校の教師をしている友人たちと食事をしていた時のこと。
 ある進学校で進路指導を担当している国語教師が「最近はみんな医学部志望なんだよなー」と、ため息交じりに言いました。

 日本経済の先行きは暗雲が立ちこめ、大企業といえども10年後、20年後の姿は見えにくい。中央官庁の官僚も、財政難や政治の混乱の中で仕事が大変そう。弁護士も過剰時代。となると、これからの長寿社会で安定して稼げるのは医師。
 というわけで、賢い高校生たちは医学部志望が高まり、どこの医学部も超難関の時代が続いているわけです。
 「でもさー、性格的に医者に向いてない子もいるよね。勉強ができるから医者を目指すって、なんか違うと思うんだ」と、熱血漢の友人は、焼酎の水割りを口に運びました。

地方の医師不足にも影響

 医学部人気の過熱は、地方の医師不足にも影響しています。
 都会の「一流」といわれる医学部は高嶺の花で、都会の受験生たちも地方の国立大学を狙うことが多い。その結果、地方の医学部で、地元出身者の比率が低下し、卒業後に地元に残ってくれないから、医局の運営にも支障が出るし、県内の病院で勤務する人材も減ってしまう。
 また、現代の日本では優秀で努力家の女子が多いから、医学部にも女子が増える。でも、医療界の育児支援はまだまだ不十分で、出産後に家庭に入ったまま職場復帰しない例も多い。これも医師不足の一因。
 目先の対策だけじゃなく、高校生たちに向けて医師という仕事への心構え、魅力、大変さなどを伝えていく努力も必要だと感じます。

先日、東京の「医師のキャリアパスを考える医学生の会」から、案内メールをいただきました。9月17日に、医学部進学を目指す中高生・浪人生を対象に、グループディスカッションをまじえたイベントを行うとのことです。
      【関連サイト】医師のキャリアパスを考える医学生の会

 臨床医や医系技官をゲストに招き、医学部卒業後に医師がどんなところで、どんな仕事をするか、先輩たちの話を聞き、自分の未来を考えてみようという趣旨だそうです。
 この団体、過去に2度取材しました。2008年に設立し、今では85大学に広がる医学生ネットワーク。中心メンバーの学生たち、優秀で、熱心で「いい医者になるだろうなー」と感じる若者たちでした。きっと周りに「頭でっかちの医学生」が少なくない現状に問題意識を抱き、受験生たちに伝えたいことがたくさんあるのでしょう。
 こうした若者たちの活動に、これからの日本への希望を感じます。
 7月に、大学の医療面接教育の話題を書きました。
   【関連記事】医学生の「面接」教育

 模擬患者さんを相手に、対話の技術を磨いていく教育。以前から力を入れていた岐阜大などでは、思いがけないがん告知などの「バッドニュース」の伝え方など、本職の医師でも難しいケースをシナリオ化して、相づちの打ち方、沈黙の間(ま)の取り方などきめ細かくチェックしています。
 知識だけでなく「こころ」を植え付けていくのも医学教育。長寿社会に貢献する医師を増やしていくために、大切な取り組みです。


模擬患者を相手に、難度の高い医療面接に励む医学生=岐阜大で

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執筆

安藤 明夫

編集委員

生きがい、生活習慣病予防、心の健康・・・医療記者としての取材体験を自分自身の「これから」に重ねて、つづっていきます。