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219回

前を向く力

2017年2月7日

 2月初め。冷たい雨の日曜日。名古屋市の熱田神宮に、約30人のがん患者、家族が集まりました。
 三重県の肺がん患者・中原博文さん(37)が主宰する団体「サミット」の会合です。日ごろはアメーバブログでつながっている仲間たちで、北海道、四国など遠方からの参加者もいました。
 まずは本宮に手を合わせて「願掛け」。ガン退治を祈る定例イベントだそうです。その姿を見て、まず驚いたのは、参加者の8割以上が女性だったこと。それも、中原さんと同世代ぐらいの若い人が中心でした。


熱田神宮での「願掛け」

 願掛けを終え、料理店の宴会場にバスで移動。自己紹介を聞いて、さらに驚きました。
 骨、肝臓などに転移しているステージⅣの肺がんの方が多かったのです。
 それが信じられないほど、みんな元気で力強い。ランチの宴も、ずっとにぎやかで、あちらこちらで爆笑が起きていました。
 肺がんは、タイプによって使う薬が違い、副作用の現れ方や薬が効き続ける期間も個々のケースで大きく異なります。早期発見が難しく、ステージⅣになると治療の可能性が限られてしまう難しいがんだったのですが、副作用の少ない分子標的薬の進歩もあって、10数年前から、生存期間がぐんぐん伸びてきました。
 全国各地の研究機関でさまざまな治験が進んでおり、従来の治療が効かなくなった患者さんが情報を得て参加しています。

周囲の意識の向上を

 サミットは、昨年6月に開かれた伊勢志摩サミットにちなんだ命名で、これまでにも関東、関西などで集まってきました。がん種は問わない、会則も「民間療法などのPRをしない」「無断で知り合いを連れてこない」など、最低限のものだけ。ネットのオフ会のような雰囲気で、「みんなでつながって楽しい時間を過ごし、自己免疫力を高めよう」「正しい情報を得て患者力をアップさせよう」と活動してきました。それぞれに、告知を受けてショックを受けた時期はあったけれど、仲間とつながる中で前を向けるようになった人たちです。
 主宰する中原さん自身、ステージⅣ。手術、分子標的薬治療などを経て、今は抗がん剤でがんの増殖を抑えています。副作用で月に数日は寝込むけれど、そのほかの日は元気な生活を送っていられるとか。
昨年12月に福岡で開かれた日本肺癌学会のシンポで、中原さんは「働きたいのに仕事を得られない」と就労の問題を訴えました。そうした患者の思いの発信と学会との協力関係について、先日の医療面でまとめました。

【関連記事】肺がん患者と医療者が連携 治療、研究に生活の視点を


シンポで話す中原さん

 医療の進歩とともに、患者さんの闘病の形も、学会の取り組みも変わってきました。闘病する患者さんが、ごく当たり前に、身近にいる時代になってきました。それでも「たぶん理解してもらえないから」と周囲に病気のことを話していない人も、まだまだ多いようです。患者力のアップの同様に、周囲の人たちの意識の向上が問われる時代です。
 気軽に話し合える関係になったら、私たちが学ぶべきことがたくさんありそうだし、時には、こちらが手助けできることもありそう。地域生活の一員として付き合ってきたいものです。

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執筆

安藤 明夫

編集委員

生きがい、生活習慣病予防、心の健康・・・医療記者としての取材体験を自分自身の「これから」に重ねて、つづっていきます。